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『幸福について ―人生論―』ショーペンハウアー

幸福について―人生論 (新潮文庫)
ショーペンハウアー
4102033017


 世界的に有名な幸福論といえば、アラン、ヒルティ、ラッセルの3大幸福論です。しかし、アランは統一感のない漫然とした随筆、ヒルティは勤勉を旨(むね)とするキリスト教倫理、ラッセルは常識的と、どれもたいして面白くはありません。

 それに対してショーペンハウアーの『幸福について』は、厭世的で皮肉がきいていて刺激的。面白さではピカイチですが、偏向的な内容のため読者を選びます。合わない人は諸言(まえがきの意)を読んだだけで、拒絶反応を起こすでしょう。

 そんな『幸福について』ですが、私にとっては最高に面白い一冊です。先日、新宿のジュンク堂で活字の大きな新版を購入した記念に、この本から引用しながら、心に移りゆくよしなしごとなどをそこはかとなく書きつらねてみようと思います。

 まずは、「第一章 人間の三つの根本規定」より。

 ショーペンハウアーは、人のあり方、人の有するもの、人の印象の与え方という人間の三つの根本規定のうち、人のあり方こそがもっとも幸福に関係が深いといいます。

 「いうまでもなく人間の幸福なあり方、いや、人間の生き方全体にとって主要なものが、人間自身のなかに存するもの、人間自身のうちにおきるものだということは明らかである。ここにこそ内心の快不快が直接宿っているわけだ。というのは内心の快不快は、ともかく、人間が感じたり意欲したり考えたりする働きの結果だからである。これに反して外部にあるいっさいのものは、何といっても間接的に内心の快不快に影響を及ぼすにすぎない」(『幸福について』ショーペンハウアー、橋本文夫訳)

 同じ出来事に対する反応もひとそれぞれです。ちょっとしたことを不快に感じてしまうひともいれば、まったく動じない人もいます。ある人にはストレスになる事態が別の人には楽しい場面となります。

 外部の出来事そのものではなく、それを受けとめる私たちの側の個性によって幸福は大きく左右されます。

 幸福を構成する要素として大きな部分を占める楽しむ能力もまた人によって異なります。

 「個性によって、人間に与えられる幸福の限度が、あらかじめ決まっている。ことに精神的能力の限界によって高尚な享楽の能力が永遠に釘づけされている」(同書)

 何かを見聞きして面白いと感じるのは、その面白さを感じるだけの享受能力が自分にあればこそです。ピカソの絵が子どもの絵にしか見えないひともいれば、その色使いの奔放さや形のは把握の大胆さに感動する人もいます。

 ショーペンハウハーは享受ではなく享楽といっていますから、受け取るだけではなく、自分が表現したり、考えたりすることも含みます。ですから自分でも絵を描くことができれば、それだけ楽しめるということです。

 音楽もしかりです。享楽の能力があれば、聞いて楽しみ、演奏して楽しみ、作って楽しめます。

 学問なども同じです。勉強するだけでなく、自分でも考えたり、研究したりしてそれを楽しむことができます。

 ショーペンハウアーが「高尚」という言葉を使ったので、つい芸術や学問を連想してしまいますが、ゲームやマンガでも同様ではないでしょうか。

 ショーペンハウアーは「最も高尚で最も変化に富み最も持続的な享楽は精神的な享楽」だといいます。だからこそ、ショーペンハウアーは、精神的な喜びを知っている者をより幸福であり、そうでない者は哀れな人であると考えています。

 現代は娯楽が多いために精神的な享楽も増えました。ブログを書くこともそうでしょうし、マンガや映画もそうです。昔はなかった精神的な享楽が増えています。自分で作り発表する場もあります。そういう意味では、「変化に富み最も持続的な享楽」を手に入れやすい時代になりました。

 ショーペンハウアーなら、もっと高尚なものを求めるべきだと考えるでしょうが、彼の場合、精神的エリート主義の傾向が強すぎるので、少し割り引いて読んだほうがいいようです。音楽といってもクラシック音楽ばかりではありません。ロックを聴いたり、自分で作って、演奏するのもいいでしょう。

 さて、本日の結論です。

 「こういったわけで、幸福がわれわれのあり方すなわち個性によってはなはだしく左右されることが明らかである。ところが大抵はわれわれの運命すなわちわれわれの有するものあるいはわれわれの印象の与え方ばかりを計算に入れている。けれども運命は好転するということもある。そのうえ、内面的な富を持っていれば、運命に対してさほど大きな要求はしないものである。これに反してばかは死なねば直らない。」(同書)

 人のあり方が幸福感に大きな影響を持つことは間違いないでしょう。それなのに、現代の日本人はあまりに外界の事物に頼っていないでしょうか。お金がなければ、地位を得なければ、美しくなければと自分のあり方ではなく、人の有するもの、人の印象の与え方に重きを置きすぎているように思えます。

 楽しみは私たちの享楽する能力に大きくかかわっています。内面的な富をより豊かにするためには、多く読書したり、よい音楽を聞いたり、美術館にいったりと内面的な意味での自分への投資をすべきでしょう。さらには自分でも、何か作ったり表現することにチャレンジすべきです。そういう時間の使い方が豊かさにつながります。

幸福について―人生論 (新潮文庫)
ショーペンハウアー

幸福について―人生論 (新潮文庫)
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ジャンル : 本・雑誌

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