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『山頭火句集』 種田山頭火 村上護編

山頭火句集 (ちくま文庫)
種田山頭火、村上 護編
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 種田山頭火(たねださんとうか)は明治から昭和を生きた放浪の俳人です。

 仕事も家庭もうまくいかないダメ男が自殺未遂の末、出家得度し、片田舎の寺の堂主となるのですが、「大正十五年四月、解くすべもない惑ひを背負うて、行乞流転の旅に出た」のでした。山頭火、四十四歳でした。

  分け入つても分け入つても青い山

  生死の中の雪ふりしきる

 彼の詠む俳句は自由律俳句なので、五七五の十七音におさまりません。まさに自由にリズムを生みだします。たとえば山頭火の句の中でも一番有名な句。

  どうしようもないわたしが歩いてゐる

 ここに内在するリズムは定型では決して生み出せないものです。もし五七五に収めようとすれば、叙情に流れるか、形式美にまぎれてしまうでしょう。どうしてもこのリズムでなければならない必然性を感じます。

 彼の旅はどうしようもない自分を抱えて歩くことそのものでした。そして、お坊さんの格好をして、お布施をいただきながらの貧乏旅でもありました。しかし、この人はどこまで仏教修行者といえるのかよくわかりません。ひたすら歩き、句を作る旅なのです。

  この旅、果てもない旅のつくつくぼうし

  落ちかかる月を観てゐるに一人

  食べるだけはいただいた雨となり

 山頭火には欠点がありました。大酒飲みであること、酒に関してはまったく自制がきかないことです。仏教修行者は不飲酒戒があるので、お酒を飲んではいけません。しかし、山頭火は、お布施でいただいたお金があると、宿に泊まって、温泉につかり、つい酒を飲んでしまいます。宿に泊まれなくても酒を買うことがあります。

  ほろほろ酔うて木の葉ふる

  酔うてこほろぎと寝てゐたよ

 山頭火は俳句誌に俳句を発表していました。一部に熱狂的なファンがいて、いろいろ世話をしてくれる人もいました。句友たちとの交友もありました。その点、めぐまれていたのかもしれませんが、なぜか放浪をやめることができません。庵を結び、一時的に腰を落ち着けても、しばらくすると放浪の旅に出てしまいます。

  また一枚ぬぎすてる旅から旅

  たたずめば風わたる空のとほくとほく

  啼いて鴉の、飛んで鴉の、おちつくところがない

 昭和十四年の暮れ、松山市に一草庵をかまえて暮らしはじめます。年が明けて、それまでの集成である句集『草木塔』を刊行します。すぐに句友に献呈するための最後の旅に出ています。

 旅から戻ったその年の秋、一草庵で句会がありました。山頭火は酩酊して隣室で休んでいました。散会後、山頭火はひとり明け方に亡くなりました。診断は心臓麻痺。五十八歳でした。

 山頭火は、自分の旅はいつまで続くのか、自分はいつまで生きるのかと、よく考えたようです。しかし、頑健な体を持った山頭火は旅で死ぬことはありませんでした。句会の日の翌日にあっさり死んだことは、彼には予想外だったかもしれません。

 彼の人生を一つの作品としてみた場合、野垂れ死にの方が彼にふさわしかったでしょう。しかし、ひとりの人間の死と見れば、このくらいでちょうどよかったのかもしれません。そのおかげで読者は心穏やかに彼の句を読むことができます。

  なかなか死ねない彼岸花さく

 そう、あなたはそう簡単には死なないんだよ、などと思いながら。

 ちくま文庫のこの本は、句のほかに随筆も収めてあります。巻末には年表もあります。小崎侃による版画の挿絵も素晴らしい。手放せない一冊です。


山頭火句集 (ちくま文庫)
村上 護

山頭火句集 (ちくま文庫)
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ジャンル : 本・雑誌

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