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『武士道』 幕藩体制下の戦わないサムライの理想化された姿

武士道 (PHP文庫)
岬 龍一郎
456966427X


 新渡戸稲造 著、岬龍一郎 翻訳

 明治時代に外国人向けに書かれた武士道の解説書です。原文は英語で日本語訳がいくつか出ています。岩波文庫版を持っていますが、字が小さいのと翻訳が固いので、PHP研究所版のものを選びました。だいぶ読みやすいです。

 ここに書かれた武士道が本当に武士の間での倫理観であったかどうかは不明です。私はかなり疑わしいと思っています。なにしろ新渡戸本人が書いているように武士道とは何かその道徳観は何かについて記した本は存在しないからです。五輪書も葉隠も特殊な存在でこれらが武士道の倫理書とは呼べません。

 ということで、本書の内容を鵜呑みにしてこれが武士道などと思い込まない方がいいでしょう。

 武士道の根本にあるのは忠義であると新渡戸は書いていますが、これはおおいに怪しい説です。戦国時代には忠義とは言えない行動が多く存在することは周知のことです。藤堂高虎は「武士たるもの七度主君を変えねば武士とは言えぬ」と家訓に残しています。

 江戸時代になって幕藩体制が確立して以降のことならば、忠義を美徳とする風潮は定着したでしょう。徳川政権がガバナンスのために儒教の倫理観を取り入れました。いわば上からの思想教育として作用していました。一方、武士側から見れば、藩を脱しては生きようがないという支配体制に合わせるための価値観という側面が強いのではないでしょうか。長いものに巻かれ、波風を立たせず、無事にすごすという因循姑息なありかたも見ようによっては忠義に見えるでしょう。

 それを越えた忠義となるとどの程度まで信じられ、実行されたのかはよくわかりません。赤穂浪士があのように賞賛されるのも、滅多に無い理想主義的行動を取ったからでしょう。赤穂藩は理念的教育が強烈だったのかもしれません。

 また、武士階層に限らず日本の各階層で倫理観が高かったとの証言も多くありますから、武士道というよりも日本人の性質として儒教的なところがあったと見てもいいかもしれません。といっても、それは新渡戸が書いたような武士道としての強烈な倫理観とはまた別ですが。

 私が疑いながら読んだせいもあって、多くの人のように本書を賞賛する気にはなれません。しかし、明治以降に日本精神なるものがいかに語られたのかそのルーツのひとつとして読んでおく価値はあると考えます。現在の日本人が考える武士道はこの本によって形作られたとはほぼ定説です。


葉隠入門 (新潮文庫) 学問のすすめ (PHP文庫) 学問のすすめ―自分の道を自分で切りひらくために 代表的日本人 代表的日本人 (岩波文庫)
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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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