スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『青年ヒトラー』 戦場の英雄、右翼の天才演説家となる

 もし、このまま時代の変化がなければ、総統ヒトラーは生まれることはなかったでしょう。

 しかし、ここで第一次世界大戦が勃発します。政治的な不満からオーストリアでの徴兵を拒んでいたヒトラーも愛するドイツ軍への入隊を志願します。ここからがらりと彼の人生が変わります。

 勇敢な兵士であったヒトラーは伝令という危険な任務につきます。そこでも彼は驚くべき勇敢さを発揮して、一級鉄十字章を含む4つの勲章を受けることになります。

 彼の勇敢さ職務に対する異常な勤勉さはどこから来るのでしょう。美術、建築、オペラなどに関心の強い芸術志向の青年であったヒトラーがなぜかくも兵士としての適性を持っていたかはまったくの謎です。もともと彼は恐怖を感じにくい性格であったとしか言いようがありません。

 将来の進路に大きな影響のある学校を中退したり、強く希望する美術学校のための受験準備をしなかったのは、先のことを考えない無謀な性格のように思えますが、じつは危機感の感じにくい、特殊な性格であったのではないでしょうか。それが戦場においては勇敢さとして現れたのだと考えられます。

 第一次世界大戦はドイツの敗戦で終わります。うちひしがれている街に画家の仕事はありません。彼は軍隊に残りながら政治活動に参加するようになります。

 この軍隊時代にヒトラーは5日間の政治思想啓発指導者講習会を受けています。第一次世界大戦で捕虜となった兵士が帰還してきたとき、反共産主義的、愛国主義啓発教育を行う必要がありました。その指導者にヒトラーが任命され、右翼的思想を学ぶためのミュンヘン大学で行われた講習会に彼は参加しました。このときヒトラーは右翼的経済思想家のゴットフリート・フェーダーの「金利奴隷制打破」論から大きな影響を受けたといいます。言うまでもなくユダヤの金融業者が悪であるという考えを含んでいます。

 その後のヒトラーを他とは違う圧倒的な存在にしたのは彼の弁舌の力と確信に満ちた極右翼思想でした。彼に弁舌の才があるのは子ども時代からでした。いわば生まれつきの才能だったのでしょう。それが軍隊での政治思想啓発指導者としての活動とナチ党での演説経験の積み重ねで、技術は洗練され、話しぶりは力強くなり、確信に満ちた右翼思想に支えられて圧倒的な力を発揮するようになったのです。

 政治思想啓発指導者として才能を発揮したヒトラーがひょんなことから右翼政党に入党し、やがて党首となるまでの経過はなかなか面白いのでぜひ本書を読んでいただきたいところです。ある意味、ここまでの物語はドイツの教養小説(主人公が成長する物語)の特殊型のようです。

 その後のヒトラーはよく知られているように演説で人を引きつける政治的リーダーとなっていきます。

 ヒトラーが演説をすれば聞き手は陶酔しました。彼は多くの聴衆を集めることができ、その全員を興奮させることができました。時代の要求にも合致していたのでしょう。当時のドイツ人には自分たちの自信を回復させてくれる思想、誰が悪者なのかを指摘する明確な思想、自分たちの目標を提示する指導力のある思想が必要でした。そこにうってつけの演説者が現れ、民衆は熱狂しました。

 本書の前半とエピローグには、ヒトラーと若き日の友人であるクビツェクとの友情物語が語られます。ヒトラーという人間は単純に悪魔的と言えないところがあります。それを知る意味でもクビツェクとの関係はとても重要です。とりわけ30年ぶりの再会と最後の別れの場面などは感動的ですらあります。

 本書はいかにしてヒトラーは生まれたのかを一部解明してくれると同時にヒトラーは友情に厚くまじめな人物でもあるということに気づかせてくれるという意味でなかなか興味深い一冊です。

 しかし、ここで描かれた青年ヒトラーとこの後のヒトラーはやはり断絶があるように感じます。その謎を埋めるためにいずれまたヒトラー関連の本を読みたいと思います。

スポンサーサイト

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

Cozy

Author:Cozy
情報処理系講師、フリーライター。減速生活者にしてB級遊民。

Twitterはcozyoffです。
TwilogはCozy(@cozyoff)です。

当ブログへのリンクはご自由に。

名言集および格言集
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。