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『若者はホントにバカか』 市民であるための教養

 たとえ若者の知識が貧弱であったところで別に問題はないだろうと考える人も多いでしょう。バカと言っても知能が低くなったわけでもなし、必要な知識は必要に応じて得ればいいのではないかという意見にも一理あります。

 しかし、著者が一体何を危惧しているのかを聞くと「なるほど」と思わされます。彼は「民主主義には、監視の目を持つ市民が必要」だから知識が必要なのだと考えています。アメリカには頼るべき伝統的権威はなく、教会も分派が多くバラバラで、「国民は自分のために行動し、思考しなければならない」のだ、と。

 実際は共和党の支持基盤であるキリスト教の一派が強力ですけど、あれは反知性主義の権化ですから、そこは不問にしておきましょう。

トーマス・ジェファーソンは、アメリカ合衆国の存続を確実にするために、公立学校を非常に重視した。1786年に彼はこう書いている。各世代にたっぷり教育を施すことこそが、国民を維持し「人々のあいだの知識の伝播」を促進する唯一の方法なのだ。もし「人々を無知なまま放置すれば」、以前の風習が復活してしまい、「王様、僧侶、貴族(中略)が強力になってしまうだろう」。


 今さら王様も貴族も復活はしないでしょうが、一部の権力者や金持ちに有利な社会が形成されることは間違いありません。もしかすると、もはや手遅れなくらいにアメリカはそうした社会であるかもしれませんが、少しでもよりよい社会にするためには市民が市民としての教養を持っていなければ、改革ができないことは間違いありません。

 教育は国民主権を守るものであり、もし主権が国民になければ、また専制政治に陥ってしまうだろう。ジェファーソンは公立学校の力を信じていた。有能だが富と家柄に恵まれていない青年をみつけることができると信じていた。そうした青年に公的資金を与えて高等教育を受けさせよう。彼らが市民になれば、「アメリカ建国の父たち」の理念や手本と対比することによって、現在の指導者の行動を見張ることができる。本と教室を通じて系譜が伝えられていくというわけだ。


 健全な民主主義には、警戒を怠らない市民が必要だ。そして、より健全な市民、警戒を怠らない市民には、知識のたくわえが必要だ。市民は、歴史的知識をつねに引き合いに出せるようになっていなければならないし、アメリカがどういう国か、そのことについて普遍の感覚を保持していなければならない。どんな英雄や悪党がいたか、どんな勝利と悲劇が起こったか、どんな主義や原則が打ち立てられたか、といった知識があれば、生き生きとした過去の像を頭のなかに入れておくことができるし、個人生活に「現在の利益や付き合い」以外の要素が入ってくることになる。



 国がおかしな方向に進むときは、たしかに国民が無知にさらされバカな判断に同意する時です。偏狭な価値観を叩き込まれたり、感情的なナショナリズムに煽られたり、反知性主義にとらわれたりするときです。民主国家の場合は教育とプロパガンダで人を扇動し、独裁政権ならばそれに加えて知識人の粛清を行ないます。

 教養の目的にはこうした「市民であるための教養」という面もあるのだなとあらためて気付かされました。そういえば古代ギリシアの教養観にもその目的に「完全な市民になること」を掲げるというものがあったはずです。教養がどういうものであるのかすら忘れられた時代なのかもしれません。

だが、2008年時点でのアメリカの状況は深刻である。アメリカは今、諸制度を活気づけてくれる若者たち、将来は強力な軍事指導者、賢明な政治指導者、献身的なジャーナリスト、厳しい教師、裁判官、不正摘発者、学者、批評家、芸術家になってくれる若者たちを必要としているし、わが国には若者を鍛える最高の学校があるのだが、人付き合いと余暇時間が原因で腐敗しているのだ。


 そうした環境を提供し、各種ツールを提供したのは大人たちですが、なにも意図して無知な若者を生み出しているわけではありません。自分の仕事のため、利潤を上げるため、上司の命令に従わなければならないがゆえにこういう状況を招いているのです。

30歳以上のすべての人々は、「若者の無知、無関心に反対だ」と率直に言うべきである。


 おそらく日本の社会全体で見れば、若者を育てる対象というよりもお客さんと考えているのではないでしょうか。教養をつけさせることよりも、どうやったらお金を使わせることができるだろうかと日夜知恵を絞っている状況でしょう。社会がどうあるべきかと考えるよりも目先の金なのです。モノを知らないバカな若者が増えたと笑っている場合ではありません。

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Author:Cozy
情報処理系講師、フリーライター。減速生活者にしてB級遊民。

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