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 『「明治」という国家』 白人に脅かされたモンゴロイドの糞意地

「明治」という国家
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司馬遼太郎著。

 司馬氏は「おわりに」で、この本の成り立ちを語っていて、それが面白い。

 もともとNHKの吉田直哉氏が「モンゴロイド家の人々」というような番組を作りたかったそうです。シベリア、アジア、北米、南米と広い地域に分布したモンゴロイドが白色人種(コーカソイド)などに苦しめられた歴史を思い、モンゴロイドの立場から世界を見ようとする構想だったようです。

 しかしそれではあまりにテーマが大きすぎる。自分が参加できるのはせいぜい「明治国家の成立」ということだと、口走ったことからこの企画は生まれました。

 ですから本書は「モンゴロイド家の一派が“明治国家”というふしぎなものを成立させたという話」となっています。

 司馬氏は企画の段階でこういったそうです。

 江戸期の日本はべつの体系の文明だったが、まったくそれとはちがった体系の“明治国家”を成立させたということは、知的な意味で世界史的な事件ではないか。その当時の日本人という三千万のモンゴロイドの苦痛やら何やらについて語ることは、世界の市民たちにとって多少刺激的な話題になるだろうといった。



 まったくそのとおりという感があります。

 モンゴロイドの遅れた文明。それは科学技術、とりわけイギリスの産業革命に連なる科学技術という意味と近代国家というふたつの意味で遅れていたのですが、そこから脱し、新たに国家をつくるという作業に取り組み、成功したという事実はまさに驚異的で、近代における刮目すべき大事件であるでしょう。

 明治といっても本書でおもに扱うのは、幕末から明治10年頃までが中心です。なぜその時期にこのような大きな改革が必要だったのか、その改革はいかに行われたのかについて司馬史観が語られるのですが、基本は氏の小説とそうかわらないはずです。

 司馬氏の幕末をあつかったいくつかの小説と明治政府成立から西南戦争までをあつかった『翔ぶが如く』。このあたりの読者ならばおおむね知った話かもしれませんが、やはり余談が楽しいことは小説とおなじで、滝廉太郎のエピソードなどはとくに心に残りました。

 話の本筋において印象に残った点はふたつあります。ひとつは幕末における朱子学の影響。というか朱子学とういものの性質、特徴です。もうひとつは勝海舟と徳川慶喜の偉さを司馬氏が強調していること。このふたつです。

 朱子学は実証的とは逆に理念的なものです。朱子学が支配する世界は自らを反省し、変じることには不適合で、西欧文明にもなじみにくいのでしょう。中国や朝鮮に比べて朱子学の影響が弱かったのが日本にとっての幸いでした。

 幕府側に勝海舟と徳川慶喜のような明敏なふたりがいたことも大きな幸いでした。戦争が始まるとさっさと逃げ出してしまった慶喜は腰抜けのように思われがちですが、日本のため、という観点からは正しい判断でした。

 龍馬伝などで幕末に興味を持った人が、次に来る明治がどんな時代であったかを知るには最適の一冊となっています。


「昭和」という国家 「昭和」という国家 (NHKブックス) 花神〈上〉 (新潮文庫) 花神 (中) (新潮文庫) この国のかたち〈1〉 (文春文庫)
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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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