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『東大生はバカになったか』 立花隆 百科事典的な教養は必要なのか?

東大生はバカになったか (文春文庫)
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 ジャーナリスト、立花隆氏による東大論、教養論です。

 東大生に教養がないこと、東大生の基礎学力も落ちたこと、この両面において、東大生はバカになったと論じています。

 基礎学力の低下については文部省(文部科学省)のゆとり教育に代表される教科内容の削減が大きな原因であることは明白で、大学の教育レベルを維持するのも困難な事態に至っています。それに加えて入試科目の減少もあり、必要な教科を勉強しないまま学部に進むという従来では考えられないようなことが起きています。

 入試科目の減少の背景には少子化と大学の経営問題、とりわけ学生数確保の問題もからみあい、解決はそれほど単純でないかもしれませんが、大学が高校の授業の補講をするという馬鹿げたことはなるべく早く終わらせる必要があるでしょう。

 しかし、私としては学力問題はたいして興味がないので、ここではおもに教養論について紹介したいと思います。

 まず、歴史的な問題。

 日本の大学はそもそも官吏養成の機関として作られたために、教養ある人間を育てるという意識が低いようです。西洋の大学は比較的、権力とは独立したところがあるのに対して、日本は権力に資することがそもそもの目的です。こうした大学観の違いが大学における教養の位置づけの違いとして現れています。  

 こうした日本の近代教育創生期の時代背景は司馬遼太郎の『坂の上の雲』などを読むとよくわかります。とにかく急いで国を作るという目的のもとに教育の近代化が行われていたので、実学本位、官吏養成本位の体制ができていきました。それには実学重視の福沢諭吉の思想が影響しています。もし西周の考えが大学のあり方に反映されていれば、西洋的な教養教育が重視されただろうと立花氏はいいます。

 次に、教養はなぜ必要なのかという問題。

 立花氏の考える教養は広い範囲の学問の知識、芸術の鑑賞、技能の習得が含まれますが、それがなぜ必要なのかについてはそれほど説得力のある議論をしているとは思えません。氏は、社会に出るとゼネラルな知識が必要だといいます。高い地位にあるほど指導的な立場であるほど、広い知識による総合的な判断が必要だから、教養が必要だといいます。具体的にこの仕事にはこれだけの知識が必要というのならばまだしも、こんな漠然とした議論でいいのでしょうか。

 外交官の例を出して、教養がないとパーティーなどの会話に困るともいいます。西洋のパーティーは人間の値踏みをする場であって、会話や所作に現れる教養のあるなしで人間が判断されてしまいます。しかし、そのときの教養がはたして立花氏が要求する教養と一致しているかは一考の余地があります。パーティーで自国や相手国の文学歴史の話題が出るかもしれません。あまりに教養がなければそれについていけないかもしれません。だからといっても立花氏が理想とするような知の世界の全体像を把握した教養人である必要はあるのでしょうか。量子力学を知らなければ軽蔑されるでしょうか。

 さらに、そのようなパーティーのあり方が正しいのか、それに合わせるべきなのか、という問題もあります。アジアの力が強くなるこれからの時代において西洋の基準に合わせることを重視するべきかという議論があってもよいでしょう。

 細分化しすぎた学問を統合的捉える必要性も語っていますが、それはそのとおりだとしても、氏の考えるほどの幅広い教養が必要かというと話は別です。例えば、新しく起こってきた学問領域には従来の三つの領域にまたがるような知識が必要だとしましょう。それならば、それら三つの領域の知識は必要であっても、それとは無関係な知識はなぜ必要なのかを説明していません。

 立花氏はしばしば専門バカと総花的な教養人の二項対立を前提として話を進めているようです。ほとんどの知識人はその中間にあるはずです。氏はあまりに極端な議論をしているように見えます。

 最後に立花氏の考える教養とは何か。これは次回にでも。

 (つづく)

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情報処理系講師、フリーライター。減速生活者にしてB級遊民。

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