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『集英社版 日本の歴史8 南北朝の動乱』 伊藤喜良 触穢思想と自力救済 中世はつらいよ

南北朝の動乱 (日本の歴史)
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 太平記の時代を描いていますが、戦争部分の記述は少なく、面白みにも欠けます。もともと太平記は面白くはないというのが一般的な評価ですし、私も面白さを感じてもいないので、そのことは不満ではありません。

 せいぜい面白いと言えるのは、天皇を軽く見ているにもかかわらず、政権の正当性を得るためにはいい加減な方法で北朝を立ててしまったことでしょうか。大義名分が必要になるのは、のちの時代も同様で、どうしても人間にはそれなりの理屈が必要なようです。

 本書の面白さは、政治闘争や戦争とは別のところにあります。

 悪党や漂泊民、非人といったメインストリームからは外れた人々が多く存在して、社会を構成していたこと。とりわけ悪党が重要な立場にいた事などがそのひとつです。しかも後醍醐天皇は悪党を軍事力に使っていたわけですから、日本はかなりぐじゃぐじゃの状態であったことがわかります。

 また天皇を聖なるもの、そこから遠いものは穢いものとする触穢思想の徹底も興味深いところです。地理的に遠方にあるところほど穢れているとして、日本の外は鬼が住んでいるという世界観が確立します。日本は神国であり、夷狄を討ち払うべきであるという思想はのちのちまで続くことになります。もっとも中国に対する態度はなかなか複雑ですけど。

 死や女性の血にたいする穢れの意識もなかなかなもので、死にそうな病人が家の外に出されたり、河原に捨てられてりと今では信じられないような行動がとられていました。現代人は家で死にたいとかいいますが、当時は家で人が死ぬのは家が穢れることでした。危篤の病人を家族が見とるなんてことはなかったのかもしれません。

 書いていてもやはり信じられないところがあります。そういう意識が強い地域や階層とそうじゃない地域や階層がやはりあるんじゃないでしょうか。

 当時は警察的な組織がしっかり機能しているわけでなく、細かな事件までいちいち裁判が行われていたわけではありません。そこで出てくるのが自分のことは自分で守る自力救済です。といっても個人レベルの話ではなく、農村などの地域とか職業団体である座などのレベルでの話です。盗みなどを発端にして報復合戦に発展する村同士の紛争の話など興味深いものがありました。

 農民が支配者に対して強訴やストライキ(逃散、ちょうさん)で応じる百姓の闘争なども面白く、中世という時代を生きる人々のつらさと逞しさを感じませます。

 太平記の時代はあまり面白くないなと思っている人も、本書を読むと、当時の民衆のあり方には興味が持てるでしょう。いずれまた中世の民衆の姿を取り上げた本を読みたいと思いました。読むならやはり網野善彦あたりでしょうか。


武者の世に (日本の歴史) 日本国王と土民 (日本の歴史) 王朝と貴族 (日本の歴史) 戦国の群像 (日本の歴史) 天下一統
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