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『100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影』 春日真人

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影
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 ほんの数年前に、数学者ポアンカレが1904年に提出した「ポアンカレ予想」が100年を経て証明されました。証明したのは、ロシアのペレルマン博士でした。

 本書は、この数学史上の大事件を追いかけたルポルタージュであり、この100年の間、ポアンカレ予想に挑戦した人々の物語です。

 そもそもポアンカレ予想とは何でしょうか。

 それは「単連結な3次元閉多様体は3次元球面に同相である。」というもので、一般人にはまったく理解できません。

 これを別の表現にすると「宇宙にグルリと巡らせたロープは、自分の手元に回収できるでだろうか。もしロープが回収できるならば、宇宙は丸いと言えるはずだ。」となります。

 多くの数学者が挑戦しながら失敗したこの100年の難問をなぜペレルマン博士は解けたのか。これは興味深い問題です。

 なぜなら多くの数学の天才たちがこの難問に挑戦し、その証明の近くまで行きながら、挫折を繰り返していたからです。通常の方法では解けないのではないかと疑うにしても、ではどうすればとけるのか、これがさっぱりわからなかったのです。

 結論から言えば、ペレルマン博士は数学者が用いる普通の方法でこの問題を解きませんでした。そして多くの数学者が彼の証明を理解できませんでした。このくだりを書いた部分は衝撃的な内容です。ぜひ本書で読んでみてください。

 そしてペレルマン博士とはどんな人物なのかが最後は話題の中心となっていきます。

 ペレルマン博士は世に言う奇人であり、数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を辞退し、ポアンカレ予想にかけられた懸賞金の100万ドル(1億円)も受け取りませんでした。

 かつては人とも交流し、質問にもやさしく答えたというペレルマン。いつしか彼は人が変わったように人間とのかかわりを断ち、数学の問題だけに集中する完全に孤独な生活を選びます。

 残念ながら、その後の彼に著者は会うことはできず、恩師や友人も会っていません。いくつかの断片的情報から孤高の数学者の姿を想像しうるのみです。

 ただいえることは、彼は数学のあれこれに通じたオールマイティーの天才であり、物理学にも優れた才能を有していたこと。高い集中力を維持するには、一人でいることが必要だったことです。それがポアンカレ予想の証明に寄与したのです。

 ペレルマン博士の論文は、その後、複数の数学者チームによる検証が行われて、その正しさが確認されています。

 本書は、NHKスペシャルとしてテレビ放映されたものに新しい情報などを加えて書かれています。テレビに釘づけになった人にもお勧めします。私はこの放送を2回見ました。

ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者 数学21世紀の7大難問 (ブルーバックス) 新装版 数学・まだこんなことがわからない (ブルーバックス) 聖なる幾何学 解読! アルキメデス写本
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