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『日本語が亡びるとき』 水村美苗

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
水村 美苗
4480814965


 インターネットで(良くも悪くも)評判ということで読んでみました。問題提起としては面白いのですが、著者の偏った価値観があまりに濃厚で、思い込みの強さばかりが目立ちました。

 著者は現在の日本文学の衰退を嘆いています。その原因を、英語の世紀になり日本語の「読まれるべき言葉」が読まれなくなったこととしてます。さらには日本語教育の現場である学校教育において近代日本文学が軽視されていることを大きな問題と考えています。

 しかし、いい小説が書かれないとしたら、それは文学以外に人材が流れていることが一番の原因でしょう。他のメディアがあふれ、小説以上に盛んになれば、そちらに優秀な人は流れます。私は、映画、マンガ、映像や音楽の世界にどんどんいい人材が流れることになんら問題を感じません。

 また、近代日本文学に比べて現代文学の作品がそれほど落ちているといえるかどうかも疑問です。大江健三郎や村上春樹は同時代的に世界で評価されています。文学好きの人は批判するかもしれませんが、現在の日本文学を代表する作家は司馬遼太郎です。売上的に司馬氏は無視することは出来ませんし、多くのアンケートで司馬氏の小説はたいがい上位に来ます。

 著者はあまりにも戦前の日本文学を高く評価しすぎているという印象です。信仰に近いものを感じます。自分がアメリカで送っていた孤独な生活、とりわけその内面生活を支えていた日本の近代文学を大事にする気持ちはわかりますが、ここまで持ち上げられるとしらけてしまいます。

 著者は現在の日本の国語教育では、近代日本文学を読める人が少なくなると危惧していますが、これもまた近代日本文学至上主義のなせるわざです。

 国語教育では機能的な文章を基本的に学ばせるのがよいでしょう。文学はメインではありません。文学に関心がある人は、自分の時間を使って読めばいいのです。近代文学がメインでないことになんの問題があるのかがわかりません。

 わかりやすく論理的に書かれた現代文の読み書きを教え、近代文学も多少は教科書に載っていて、古文と漢文がある。バランス的にはこれでいいでしょう。基礎的な教育が社会人を養成することを目的とするならば、その方が近代文学一辺倒の教育よりも実のある教育となるはずです。むしろ、実用的な文章の読み書きすらできていないことが現代の教育の問題点です。鴎外や漱石が読めなくてもさほど問題はありません。

 もし、近代文学に興味を持った学生がいるのなら、高校の選択科目に近代文学の授業があったり、大学の教養課程に近代文学があればいいじゃないですか。国文科を用意する大学だってあります。

 将来、英語で文学が書かれるかもしれないと著者は恐れていますが、現時点で英語で小説を書く日本の小説家はいませんし、その兆候もありません。取り越し苦労という気がします。

 インターネットでいかに英語での文章が多くなろうとも、日本人の大多数は日本語で書き、日本語で読んでいます。

 たとえば、こんな記事。

英語を超えた日本語ブログの投稿数,その理由は?

ブログ検索サービスを提供する米テクノラティが4月5日に発表した調査結果によると,2006年第4四半期は投稿数で日本語ブログが世界最多だった(参考リンク:「The State of the Live Web」,図)。実に世界のブログ投稿数の37%が日本語によるもので,事実上の世界標準語である英語や,母語人口で世界最多の中国語を抑えての1位である。


 著者の考えからすれば、インターネット上で日本人は英語を書き、英語を読むようになるはずですが、実際にはそうなっていません。むしろ驚異的な日本語の記事量、占有率です。

 もっとも著者の水村氏なら、読むに値しない文章だと評するでしょうが。

 日本語で書かれた日本文学を守るために近代文学を教えるという理屈も説得力に欠けます。著者はあまりに現代文学を憎んでいて、小説以外の文章を軽視しているために、日本近代文学万能主義に陥っているようです。

 とはいえ、最初から最後までつまらない本ではありません。面白く読んだ部分も多くあります。普遍語、国語、現地語の関係。日本語が成立する過程での大学の役割と大学から外れて在野となった小説家の役割。あちこちからの引用や雑学的な部分など。

 ネット上には本書に関する論評(や論争)があふれています。私はほとんど読んでいませんが、話のネタに本書を読んでから、論争に参加してみるのも悪くありません。


↓話題の発信源
水村美苗「日本語が亡びるとき」は、すべての日本人がいま読むべき本だと思う。

今世紀最重要の一冊 - 書評 - 日本語が亡びるとき

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ジャンル : 本・雑誌

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