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『テロリストがアメリカを憎む理由』 芝生瑞和

「テロリスト」がアメリカを憎む理由
芝生 瑞和
4620315419


 9.11アメリカ同時多発テロ事件のほぼ1年後にパレスチナ問題に詳しいジャーナリストが書いたノンフィクションです。

 アメリカの人々の反応や街の様子などがジャーナリストらしい低い視線から捉えられていて、テレビや新聞などで知っている事件とは違った印象を与えます。

 事件の直後、アメリカの白人たちはなぜ自分たちが攻撃されるのかがわからず、不安におびえ、屈辱感も感じていました。彼らはアメリカがイスラエルを支援することでパレスチナやアラブにどんなことをし、どれほどの被害を与え、人を殺しているのかわかっていませんでした。もちろんそれはほとんど報道がされていないからですが、その結果どれほどの憎しみを生んでいるのがわかっていませんでした。そして当然ながら、自分たちが攻撃の対象となっていたこともわかっていませんでした。

 時間が少し立つと白人たちは過剰に反応しはじめます。国内にいるアラブ系の人たちやイスラム教徒に対する警戒心をあらわにし、攻撃します。こうした異なる集団への偏見から生まれる暴力などをヘイトクライムと呼びます。ヘイトクライムは相手がどんな人間なのか詳しいことなど調べもせずに、なされました。ビンラディンを支持していないひとびとにもヘイトクライムは向かいました。ひどいときには外見が似ているというだけでアラブ系でもイスラム教徒でもない人に向かうことがあります。

 国家レベルにおいてはアフガニスタンの攻撃、イラクへの攻撃とつきすすむのですが、タリバンへの攻撃はやや不当です。ビンラディンをかくまっているから、というのが理由ですが、それだけで攻撃し、しかも民間人への被害も多大に出すとはいささかやりすぎです。イラクへの攻撃の理由はまったくの濡れ衣でした。

 ブッシュはイスラムではなくテロリストとの戦いだと強調していましたが、実際には無差別に近い攻撃をしていました。逆から見ればブッシュの行動は悪魔の所業です。

 このような国内的にも国際的にも無謀なアメリカの反応はなにもこのときはじまったのではなく、アラブと西洋諸国の長い歴史の中でも繰り返されたものでした。イスラエルがどれほどの被害をパレスチナに与えたかを考えると、テロリストがアメリカ政府や軍隊だけではなく、民間人も攻撃するのも、けっして過剰な報復ともいえないことがわかります。(どちらも非道でありますが)
 
 日本人にはわかりにくく、また関心も持ちにくいパレスチナ問題の歴史を本書はわかりやすく解説していますし、重要な場面でアラブにいた著者はジャーナリストらしい臨場感で伝えてくれます。

 金持ちの息子であるビンラディンがなぜテロリストになったのかを解説したくだりはなかなか面白いものがあります。イスラムの理想と西洋化の矛盾が彼をテロリストにしたともいえるのですが、それはつまりグローバル化により彼はテロリストになったともいえるわけで、グローバル化の矛盾についても考えさせられます。

 アメリカVSイスラム過激派の構図がいまいちわかりにくいという人は本書を読まれるとある程度はすっきりするでしょう。分量も少なめで読みやすいので手軽に手に取れる入門書です。

大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」 (講談社プラスアルファ新書)
池上 彰
4062721279
イスラム教入門 (岩波新書)
中村 広治郎
4004305381


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