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『山頭火のぐうたら日記』 俳句ところり往生

山頭火のぐうたら日記
種田 山頭火
4394902614


 どうしようもない自分はそのままとして、愚は愚のまま生きるとして、山頭火には念願というべきものが生まれていました。

 「私の念願は二つ、ただ二つある、ほんとうの自分の句を作りあげることがその一つ、そして他の一つはころり往生である、病んでも長く苦しまないで、あれこれと厄介をかけないで、めでたい死を遂げたいのである(私は心臓麻痺か脳溢血で無造作に往生すると信じている)。」(日記・昭和十四年九月二日)

 自分の句を作ること、ころり往生すること。この二つが残された願いでした。しかし、普通に考えれば、それらはあまりに困難な願いです。

 ほんとうの自分の文学作品を作るということは並みの人間にできることではありません。とはいえ、この時すでにある程度自分の句の世界を確立している山頭火です。よりよい句、ほんとうの自分の句を願ってもなんら不思議はありません。実際、彼は俳句の世界に名を残しました。

 山頭火はまさには句を作っていき、そして死にました。そういう意味でも彼にとって俳句を作ることは自然であり、彼の生きる意味そのものだったのでしょう。

 「飲み食いしないでも句を作ることは怠らない、いいかえると、腹は空っていても句は出来るのである、水の流れるように句心は湧いて溢れるのだ、私にあっては、生きるとは句作することである、句作即生活だ。」(日記・昭和十四年九月二日)

 もう一方のころり往生はどうでしょう。自殺以外で自分の死因を選ぶこともできません。一般人からすると、酒をやめるほうが簡単なことに思えます。しかし、彼にはそれはできません。放浪もやめられない。旅にあってせめて苦しまずに死にたい。ある意味、甘え、希望的観測にすぎません。
  
 「人間の死所を得ることは難いかな、私は希う、獣のように、鳥のように、せめて虫のようにでも死にたい、私が旅するのは死場所を探すのだ!」(日記・昭和十四年八月二十六日)

 じつは私も苦しまなければ、野垂れ死にも悪くないと思います。病気の治療が長引いて、ベッドの上で不自由な生活をし、苦しみながら死ぬのはいやです。それならば、いっそあっさりと野垂れ死できたら、そのほうがよっぽどましです。それは「獣のように、鳥のように、せめて虫のように」死ぬことかもしれませんが、現代のような末期医療で死ぬことに比べて不幸であるとも思えません。

 山頭火の時代にあっては、畳の上で死ぬことが理想でしょうが、やはり長患いで死ぬ人も多かったのでしょう。彼にはそれは怖かったのかもしれません。ころりと死んでしまいたかったのです。それは誰でも願うことです。ただよくわからないのは、彼は畳の上での死を望んだのかどうかということです。旅の宿で死ぬよりも野宿をしながらのたれ死ぬ方が山頭火らしい死に方です。何もかも捨てて、放浪と句作そして酒に生きた俳人にはやはりそれはふさわしい死であると思います。

 ともあれ彼はころり往生を願いました。願いながらも愚は愚。バカは治りません。最晩年になっても相変わらずです。

 「馬鹿野郎! 先夜は交番の厄介になつたではないか、阿呆、年寄りは年寄りらしく振舞え、戦時ではないか、しつかりしろ!」(日記・昭和十五年八月二十三日)

 大酒でも飲んだのでしょう。このとき、58歳。太平洋戦争の前年で、日中戦争はとっくにはじまっています。山頭火が死ぬ年の出来事でした。

 「ワン公よ有難う、白いワン公よ、あまりは、これもどこからともなく出てきた白い猫に供養した。最初の、そして最後の功徳! 犬から頂戴するとは!」(日記・昭和十五年十月二日)

 どうやら犬に食べ物を恵んでもらったようです。犬は山頭火の何かを感じ取っていたのかもしれません。

 それから8日後の十月十日に、山頭火のささやかな住居である一草庵で句会があり、山頭火は句会の隣室で休息します。句会の参加者たちは彼の病状に気付かぬまま散会します。

 翌十一日、午前四時ごろに逝去。診断は心臓麻痺でした。予想通りの死因でころり往生を遂げました。

山頭火日記〈1〉 (山頭火文庫)
山頭火日記〈2〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈3〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈4〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈5〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈6〉 (山頭火文庫)
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