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『山頭火のぐうたら日記』 行乞と歩行と俳句

山頭火のぐうたら日記
種田 山頭火
4394902614


 この本は種田山頭火の日記からの抜粋を中心に、書簡、雑誌に発表した文章から構成されています。日記にはその時々の心情がストレートに語られているので、山頭火が何に悩みどう生きようとしていたのかがよくわかります。

 俳句を読んでも彼の心情はわかりますが、日記の方がやはり赤裸々です。

 俳句だけを読んでいる人はの中には山頭火のことを仏教修行者のように思っている人も多いようですが、日記からはとてもそんな人間像は浮かんできません。

 「行乞は嫌だ、流浪も嫌だ、嫌なことをしなければならないから、なおなお嫌だ。」(日記・昭和五年十二月十九日)

 「私は疲れた。歩くことにも疲れたが、それよりも行乞の矛盾を繰り返すことに疲れた。袈裟のかげに隠れる、嘘の経文を読む、貰いの技巧を弄する、応供の資格なくして供養を受ける苦悩には堪えきれなくなったのである。」(雑誌「三八九」第1集・昭和六年二月二日発行)

 ここから浮かんでくるのは、袈裟を着て仏教修行者のフリをして托鉢をするニセ坊主の姿です。彼は実際に出家して得度もしていますが、少なくとも自分の意識の上では仏教者ではありません。はっきりと自己批判をしています。

 「托鉢して、そして仏弟子として修行しないならば、それは一種の詐偽取材だ。行乞して、物資を費消するならば、それも一種の搾取だ。仏家として仏道に精進しないならば、背任行為ではないか!
」(日記・昭和十一年十月十日)

 このような自己批判を山頭火の誠実さと見る人もいるかもしれませんが、戒律を守らない大酒のみで仏教修行をしない人を修行者と呼ぶことはできません。もちろん、戒律を守らない坊主が日本には多いし、反省するだけでもましだと弁護もできます。そういう人は山頭火を求道者のように見る傾向があります。しかし、それは比較対照する日本の坊主がひどすぎるのです。批判してしかるべきと私は思います。

 それにしても、なぜ山頭火はそんなに嫌な行乞の旅を続けるのでしょう。彼は収入源がほとんどないので行乞が収入を得る手段になっていることが大きな理由です。

 「やっぱり行乞したくない、したくないけれどしなければならない、やっと食べるだけ泊まるだけいただく(ずいぶんハジカれた、いやいやでやるんだから、それがあたまりまえだろう)。」(日記・昭和五年十月二十日)

 「行乞は一種の労働だ、殊に私のような乞食坊主には堪えがたい苦悩だ、しかしそれは反省と努力とをもたらす、私は行乞しないでいると、いつとなく知らず識らずの間に安易と放恣とに堕在する、」(日記・昭和十年八月十九日


 山頭火は詐欺的であると自覚していますが、食うためには仕方ないと考えていたようです。さらにその苦しみの行為が人格的な成長を促す面もあると考えていました。では、本当に彼は成長したのでしょうか。それは後の日記を見なければなりません。

 歩くことに対してはむしろ肯定的です。歩くのは疲れたといいながら、本来は歩くことが好きであり、歩くことに執着しています。それは俳句を作ることと関連しています。

 「歩かない日はさみしい、飲まない日はさみしい、作らない日はさみしい、ひとりでいることはさみしいけれど、ひとりで歩き、ひとりで飲み、ひとりで作っていることはさみしくない。」(日記・昭和五年十月二十日)

 「いよいよ覚悟をきめた、私は其中庵を解消して遠い旅に出かけよう、背水の陣をしくのだ、捨身の構えだ、行乞山頭火でないとほんとうの句が出来ない、俳人山頭火になりきれない。」(日記・昭和十三年四月十二日)

 放浪の旅の中で山頭火の魅力的な句はできます。俳句を作るためにも歩かなければならないと彼は考えています。しかも行乞する中で俳句ができると思っています。ただ歩くだけではなく行乞する姿が俳句の題材として魅力的だということを意味するのではないでしょうか。お金を得る手段としての行乞が俳句のネタにもなっているのです。

 であるならなおさら真面目に仏教修行をすべきなのですが、どうにもそれが彼にはできません。

(つづく)

山頭火日記〈1〉 (山頭火文庫)
山頭火日記〈2〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈3〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈4〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈5〉 (山頭火文庫)
山頭火 日記〈6〉 (山頭火文庫)
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ジャンル : 本・雑誌

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