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『ハゲタカ 上下』 真山仁

ハゲタカ(上) (講談社文庫)
真山 仁
4062753529

ハゲタカ(下) (講談社文庫)
真山 仁
4062753537


 小説『ハゲタカ』と続編『ハゲタカII』(旧題バイアウト)がNHKの連続ドラマ『ハゲタカ』の原作となっています。テレビドラマはなかなか面白かったし、最近経済に興味を持っているし、amazonでのこの小説の評判もかなりよかったので読んでみました。

 内容は、バブルの後遺症に苦しむ日本において企業再生を主な仕事とする外資のファンド、いわゆるハゲタカファンドが日本企業を買収するという話です。その点ではテレビドラマと同じですが、人間関係の設定はだいぶ違います。

 鷲津と芝野が過去に上司と部下であったという設定はありません。そのかわり、鷲津の過去が意外な設定となっています(ネタバレになるので書けません)。また、リン、飯島という人物が大きな役割を得ています。テレビドラマでは準主役級だった女性の新聞記者は出てきません。
 
 取り上げられる買収劇も一つを除いて違います。テレビドラマの方は続編から多く取っているのかもしれません。

 ここまで違うともう別の話といっていいくらいです。ドラマとの違いをむしろ楽しんだほうがいいでしょう。

 幸い、小説としてなかなか面白く書かれています。ハゲタカや買収劇の内情をしっかり描いていること、飽きさせないストーリーも評価できます。

 小説を読みながら、バブルの崩壊で生じた不良債権処理になぜ時間がかかってしまったのか、負債を抱えた企業を再生するにはどんなやり方があるのかを勉強できるので、一石二鳥。お得感があります。

 残念なのは人物がやや薄っぺらいこと。登場人物の言動が安っぽいドラマのような印象を与えることがしばしばあることです。とりわけ鷲津とリンのやり取りには辟易とします。人間が描けるようになったら、この作家はそうとうな魅力を持つでしょう。

 とはいえ、それを補ってあまりある魅力があります。全体としては高い評価を与えたい作品です。

 ↓ドラマも秀逸です。

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『強欲資本主義 ウォール街の自爆』 神谷秀樹

強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書)
神谷 秀樹
4166606638


 著者の神谷氏は住友銀行、米投資銀行のゴールドマン・サックスを経て、投資銀行ロバーツ・ミタニLLCを創業した人物。それだけに銀行や投信銀行の内情に詳しく、その強欲ぶりをつぶさに見てきた内部の人です。

 本書では、神谷氏が見てきたアメリカ金融会社の強欲ぶりの実態が様々に語られます。そのうえで氏は金融業が本来の業務を忘れて強欲にとらわれたことを強く批判しています。そして日本がアメリカの真似をしないように、日本人らしい実直な価値観を保ち続けるようにと望んでいます。実際、自分もまっとうな事業を求めてロバーツ・ミタニLLCを創業したそうです。

 新自由主義における金融業の暴走は、制度の問題であると同時に価値観、意識の問題であるようだ。

主役である実業を営む方たちの事業構築を助けるのが金融本来の仕事のあり方であり、それこそが身分相応なのである。
 ところがアメリカの金融業界、とりわけウォール街の現状は、まったく様相を異にしている。
 (略)
 彼らは「その事業」に興味を持ち「その事業」を行うために投資するのではない。事業は何でもよい。「純粋に金融収益を上げること」、「安く買って高く売って儲けること」、「お金がお金を生み出すこと」こそが、彼らの最終目的なのである。


 アメリカは収益の多くを金融に頼るようになり、2007年には企業収益の4割を占めるようになりました。モノ作りの実業は衰退しました。GMもGEも金融の力で生きていました。それが、こういう結果を招いたのです。

 無理な貸し出しとしてはサブプライムローンが有名ですが、GMの金融子会社であるGMACが住宅金融にのめりこむと同時に無茶な自動車ローンを組んでいた事実にも注目すべきです。収益の上がらない自動車を作りながら、ありえないローンで自動車を売り続けたGMがおかしくなるのは当然です。

 金融業を巨大化させた原因の一つはグローバル化です。グローバル化についての著者の解説がなるほどと思わせるので引用しましょう。

 何故、世界は「グローバル・スタンダード」に統一しなければいけないのだろうか。
 グローバル・スタンダードを推進している中心人物は、間違いなく米国の巨大投資銀行のトップたちであろう。きわめて単純化すれば、証券の世界における販売システムが、世界で十社にも満たない巨大投資銀行 (預金金融機関の投資銀行部門も含む) に握られているといっていい。
 彼らは、自分たちが扱いやすいように、あらゆる証券を「定型化された商品」にしようとしている。つまり、自分たちが売買しやすいように取引条件を規格化するのだ。もちろん、それは証券だけに限らない。原油やとうもろこし、大豆、コーヒー豆のように、彼らが創った商品取引の仕組みのなかに、さまざまな商品を組み込んで行くほど、彼らの旨味と市場支配力は増していく。


 グローバル化とはアメリカの巨大資本が世界の市場を支配するための「地ならし」のようなものだというのです。アメリカが栄えることでそのおこぼれに預かることはできますが、しかし金融の崩壊がやがてやってくることは必定です。バブルにならずにうまくまわる規制をかけたとしても搾り取られる新しい貧困層を生み出すことは間違いありません。

 このように強欲な人々が世界を支配し、弱者を激しく搾取することを許し、後ろ盾にさえなっているのはアメリカ政府です。

ウォール街とワシントンとは、昔も今もしっかりと結託している。政府の高級官僚は、退職すると、こぞって投資銀行やプライベート・エクイティー・ファンドに迎えられ、大金持ちになる機会を与えられる。また、政府は元投資銀行家を高級官僚や海外公館大使などに採用する。
 先に述べたとおり、彼らは「タックス・ホリデー」を貰う。投資銀行やプライベート・エクイティー・ファンドの幹部は、こぞって大統領候補の選挙応援に参加し、各地で寄付金募りの夕食会などを催す。この政治権力と金融権力の結託は余りに強固であり、これを壊すことはほとんど不可能なようにさえ思える。


 そこで著者が期待するのはオバマ大統領(執筆時は大統領候補)だ。「政治を既得権者のものから国民の手元に取り戻すならば、アメリカの経済社会はまともなものに生まれ変わる可能性がある」といいます。

 さて、オバマはそこまでやる気はあるのでしょうか。また、強大な抵抗勢力はそのような改革を甘んじて受けるでしょうか。これからのオバマの政治に注目です。

 これからの経済社会はゼロ成長になるだろうと神谷氏は予想しています。そして、アメリカ型の資本主義を拒否して日本人らしい価値観に基づいた新しい資本主義が日本から生まれないかと期待しています。

 ルネッサンスの礎を築いた聖フランチェスコとフリードリッヒ2世を例に挙げ、こういいます。

お金に囚われるなという価値観、しっかりとした税制、信用度の高い通貨の復興、学問(芸術と科学)の振興とは現代に生きる我々が、今まさに必要としているそのものではないだろうか。


 日本から生まれる新しい経済ははたしてどのようなものでしょうか。従来の視点から見れば、社会主義的な要素を含んでいることは間違いないでしょうが、けっして社会主義ではないはずです。資本主義の活力と創意工夫を生かせていけること、その暴走を止められること、不幸な人をなるべく生まないような富の分配を調整できること。そうしたことが実現できる社会であればいいと思います。

石油の支配者 (文春新書) さらば、強欲資本主義―会社も人もすべからく倫理的たるべし すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363) (光文社新書) 世界金融危機 (岩波ブックレット) 間違いだらけの経済政策 (日経プレミアシリーズ)
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テーマ : 最近読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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Author:Cozy
情報処理系講師、フリーライター。減速生活者にしてB級遊民。

Twitterはcozyoffです。
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