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『誰のための会社にするか』 ロナルド・ドーア

誰のための会社にするか (岩波新書)
Ronald Dore
4004310253


 会社は誰のものなのか。株主か従業員を中心とするステークホルダー(利害関係者)か。

 ドーアの主張は、会社は誰のものか、ではなく、会社は誰のものにすればいいのかという選択の問題だということです。もちろんドーアはステークホルダーのものであるべきだといいます。

 以下、ドーア自身による本書の要約です。

 (一) 価値の問題だが、基本的立場として、経営者が株主利益の最大化を使命とする「株主所有物企業」より、経営者がすべてのステークホルダーに対して責任を持つ 「ステークホルダー企業」 の方が、企業内の人間関係の観点からも、その社会的効果(商取引の質、相互信用の度合い、所得分布など)の観点からも、好ましい。
 (二) 日本の「準共同体的企業」はステークホルダー企業の一種だったが、第二章(三二ページ)の記述のように、また、最近の不正隠蔽への組合の協力の例も示すように、他のステークホルダーに比べて従業員を優先する性格が多少、度が過ぎて強かった。
 (三) 過去一五年間において、日本の企業制度を「株主所有物企業」のモデルに近づけようとする法律が相次いで制定され、経営者による自主的な組織改編もかなり行われてきた。
 (四) 以上の制度変革の原動力は、経済効率・経済環境変革への対応、不正対策、透明性確保など従来の制度の欠陥を是正するという、改革を推進する政府や経営陣が明示的に標傍する動機にあったというよりも、むしろ、国民心理、階級構造の変遷、外資系投資家の到来などの方に説明を求めなければならない。
 (五) 「株主革命」とさえ言える経営姿勢の大きな変化が起こったのは、その法律や組織の変革というよりも、むしろ経営者の目標の中で「株価維持」が以前には考えられなかったくらいの優先順位となったためである。
 (六) それを説明するのは、外資系投資家の影響、イデオロギーの変化、敵対的買収の現実性など、諸要因の複合体である。
 (七) 最近、「株主所有物企業」 への接近が行き過ぎたのではないかという反省の声をよく聞くようになった。「ステークホルダー」という言葉は財界人の演説によく出るようになった。


 つまり、外的環境の変化と国策により日本的経営からアメリカ的経営に傾きけたことは行きすぎであった。そういう反省に現在はあるということです。

 ではアメリカナイズされたコーポレートガバナンスを再び日本的経営に戻すには、どうすればいいか。それを最終章で述べています。

 それは大きく分けて3つ。マネーゲームとしての企業買収に対応する仕組み作り。社外重役や内部告発、従業員の経営参加などのインサイダー経営者への規制と仕組みづくり。そして付加価値計算書の作成です。

 ステークホルダーのうち、少なくとも、付加価値計算書とは、株主、従業員、債権者、および国家への還元を同時に比較できる、付加価値配分決算の開示を義務付けることである。
(略)
 これらは、株主や銀行の資本と社員の労働の相乗効果を持っている性格を象徴するような計算であり、企業が、役員、管理職、平社員といった人間の総体であるという意識を強める手段として、ステークホルダー企業にとって相応しい会計の出し方である。


 これにより企業はステークホルダーのものであるという意識が強まります。企業をある方向へ向けてガバナンスするには、やはり企業をどう捉えるかという意識がとても重要です。

 本書は専門的な話題を扱っていますが、経営用語を多少知っていれば、読みにくい本ではありません。会社はどうあるべきかという問題意識を持っていて、なぜ最近日本の会社は変わってしまったのだろうと思っているのなら、一度読んでみる価値はあります。


働くということ - グローバル化と労働の新しい意味 (中公新書) 日本型資本主義と市場主義の衝突―日・独対アングロサクソン 会社はだれのものか 株式会社に社会的責任はあるか 会社は誰のものか (新潮新書)
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テーマ : 最近読んだ本
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『ブログ論壇の誕生』 佐々木俊尚

ブログ論壇の誕生 (文春新書)
佐々木 俊尚
4166606573


 ブログ論壇がテーマというよりネット全般が話題になっています。ネットでのニュース配信、2ちゃんねるから発した電凸(電話突撃)、ニコニコ動画など。ひとつの論旨があるというよりも雑多な話題に言及しています。雑誌の連載に加筆してまとめたものなので、ちょっととりとめのない印象ですが、いろいろな事件、トピックスをまとめて読めるのは、この手の話題が好きな人には魅力です。

 著者はネットの就職氷河期のロストジェネレーション世代と現実社会の団塊世代の世代間の対立を強調していますが、本当はどうなのでしょう。ブログ論壇と既存メディアってそんなに年齢限定的ではないはずです。むしろ年齢の問題ではなく、既得権益を持たないものと持っているものとの対立といったほうが適切じゃないでしょうか。

 上記の例のように全体に図式化したがる傾向が内容を浅くしている印象です。集合知とかあやしげな用語に頼ったりしているのも安易です。考察部分は物足りません。基本的には面白く読めるのですが、物足りないのが残念です。

 しかし、自分が読んだことのないブログからの引用が随所にあり、ふーん、ネットではこんな意見が書かれているのかと何度か思いました。こういうブログの意見の紹介を増やして欲しいですね。著者の論考は減らしてもっとジャーナリストらしく書いてくれれば、私としてはもっと楽しめたでしょう。

 巻末に「佐々木俊尚が選んだ著名ブロガーリスト」なるものがあります。これはリンク集としてネット上に置いて欲しいなと思って調べたら、ちゃんとリンク集がありました。これはよい配慮です。

佐々木俊尚が選んだ著名ブロガーリスト

 こうなると、いっそテーマごとに「まとめサイト」やリンク集が欲しいですね。出版物の意味がなくなりますが、やはりネットの話題はネットで扱うのが便利です。

インフォコモンズ (講談社BIZ) グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?―Web2.0によって世界を狂わすシリコンバレーのユートピアンたち アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか 情報革命バブルの崩壊 (文春新書) サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)
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『爆笑問題のニッポンの教養 人間は考える腸である』 爆笑問題+上野川修一

爆笑問題のニッポンの教養 人間は考える腸である 腸管免疫学 (爆笑問題のニッポンの教養 14)
太田 光
4062826097


 爆笑問題の二人と腸管免疫学者の上野川博士との鼎談。

 NHKでの放送と内容はほぼ同じですが、時間の都合で放送できなかった分も収録されているので、さらに関心のある人向けの本です。

 動物は腸が基本。腸が発達していろいろな器官を増やしたのが様々な動物。そして、腸には大量の細菌が住み着いていて宿主と共棲をしています。それほど腸は大切で腸内の最近は大切だという話です。そして、腸内の細菌の状態が免疫に大いに関係しているというのが、教授の研究です。

 じつはテレビでも紹介されていた上野川教授の朝食を確かめたかったのが、本書を手に取った理由です。

 ・ソーセージ、ハム、ゆで卵などタンパク源として、どれかひとつとることが多い
 ・パンまたはご飯 炭水化物の補給
 ・ゴマ カルシウム、鉄、亜鉛などミネラルが豊富
 ・ナッツ類 黒豆にはオリゴ糖、かぼちゃの種には亜鉛も含まれ免疫機能を高める
 ・野菜ジュース 旬の野菜でビタミンを補給
 ・ヨーグルトとハチミツ 乳酸菌で免疫を活性化し、ハチミツのオリゴ糖で腸内細菌を増やす

 私の場合、たいがいは野菜ジュースより直接野菜を食べます。ナッツ類はあまり食べません。これからは黒豆を食べるようにしよう。

爆笑問題のニッポンの教養 異形のモノに美は宿る 日本美術史 (爆笑問題のニッポンの教養 13) 爆笑問題のニッポンの教養―生き残りの条件≠強さ 数理生態学 (爆笑問題のニッポンの教養 16) 爆笑問題のニッポンの教養―ひきこもりでセカイが開く時 精神医学 (爆笑問題のニッポンの教養 15) 爆笑問題のニッポンの教養 万物は渋滞する 渋滞学 (爆笑問題のニッポンの教養 12) 爆笑問題のニッポンの教養 人間は失敗作である 比較解剖学 (爆笑問題のニッポンの教養 8)
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『非正規労働の向かう先』 鴨桃代

非正規労働の向かう先 (岩波ブックレット)
鴨 桃代
4000093991


 著者の鴨さんは元保育士の労働運動家です。

 本書は相談の現場からの非正規労働問題の報告です。派遣社員や契約社員、パートが置かれた様々な困難を紹介しています。

 一般に非正規社員の困難は労働条件に悪さに代表されますが、実際に非正規労働者がつらい目にあう場面はかなり細かいところにまで及んでいます。立場の弱さに起因する圧力、正社員からの陰湿な差別待遇、正社員を守るためのしわ寄せ、など。いずれも非正規労働を権利を持った人間としてまともに扱おうとしないことが原因です。

 派遣労働者の場合、さらに派遣会社のピンハネさえ出来ればいいとする態度にも問題があります。派遣元は派遣先企業の機嫌を損ねないために派遣社員を犠牲にしています。

 では、非正規労働者はどのように自分を守ればいいのでしょうか。その答えの一つが労働相談であり、組合への参加です。

 ユニオンは、相談内容に対する法的根拠を助言し、交渉の道筋を示し、一緒にたたかおう、と言うことはできます。しかし、当事者である労働者に、たたかう意思と勇気がないところでサポートはできません。解雇を通告されたとき、「わかりました」と言ってしまうとそこで終わりなのです。でも納得できなければそこで勇気を出し、「納得がいかない」「考えさせてください」と言って相談に来てくれれば、そこから始めることができます。たたかう意思があれば、どうしたらよいかの選択肢は広がり、ユニオンもサポートできるのです。


 日本では労働組合に対する違和感や偏見が強く、納得がいかなくても文句を言わない同調性の強い人が多いので、組合に相談、参加するには抵抗感があるでしょう。それを突破していくには、このような取り組みがあり、成果が上がっていることを周知する必要がありそうです。そして、非正規労働者の意識が変わっていかなくてはなりません。
 
 本書に報告された具体例を見ていると、どうやらこれは格差問題ではなくて、差別問題ではないのか、と思えてきます。現在、マスコミやネットで語られる労働問題は、格差、貧困がメインですが、差別という観点が必要ではないかと思いました。

ワーキングプアと偽装請負―職場ルポ‐非正規雇用を追って (文献パンフ) 日雇い派遣―グッドウィル、フルキャストで働く (シリーズ労働破壊) 派遣のリアル-300万人の悲鳴が聞こえる (宝島社新書) 偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43) (朝日新書) 格差社会ニッポンで働くということ―雇用と労働のゆくえをみつめて
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『いつまでも、いつまでもお元気で 特攻隊員たちが遺した最後の言葉』 知覧特攻平和会館編

いつまでも、いつまでもお元気で―特攻隊員たちが遺した最後の言葉
知覧特攻平和会館
4794216203


 太平洋戦争末期、鹿児島県の知覧には特攻(特別攻撃隊)基地がありました。アメリカの戦艦に体当たりをして相手に打撃を与えるために、片道分の燃料と爆弾を積んで多くの若者がその知覧の飛行場から飛び立ちました。この本に収められているのはその若者たちが出した手紙です。

 おそらく鹿児島の風景であろう美しい写真をバックに、その日あるいは数日内にでも亡くなったであろう若者の言葉が並びます。(ページ数がとても少ないのが残念です)

 似たような趣旨の本として『きけ わだつみのこえ』があります。こちらは学徒兵の遺書を集めた遺稿集です。日記からの文章が多く、当時の若者の思考がよくわかります。が、編集者の意図がかなり強く反映していて、戦争への懐疑もみられます。

 本書は、手紙。短い文面に、相手への気配りの言葉、感謝の言葉が多く見られます。その一方で、特攻成功への意志を語る言葉がそのまま掲載されていて、反戦気分で手に取ると面食らうかもしれません。

花花しく戦って
必ず必ず
敵艦を屠(ほふ)ります。
皆様ご安心下さい。
私の心はいま日本晴れです。


その真意は知る由もありませんが、このようなきわめて好戦的な言葉が見られます。

特攻というと、心ならずも若い命をささげて無念であったろうという反戦的戦後民主的思想で解釈された特攻隊員イメージがありますが、それは確かに一面の真実であって、好戦的な気分で死を迎えた若者も少なからずいたのではないかと推測されます。


その中で、谷川俊太郎のようなまるで現代の詩人が書いたような手紙がありました。

  「枝幹二 22歳」

あんまり緑が美しい
今日これから
死にに行く事すら
忘れてしまいそうだ。
真っ青な空
ぽかんと浮かぶ白い雲
六月の知覧は
もうセミの声がして
夏を思わせる。
作戦命令を待っている間に
小鳥の声がたのしそう
「俺もこんどは小鳥になるよ」
日のあたる草の上に
ねころんで
杉本がこんなことを云っている
笑わせるな
本日十三、三五分
いよいよ知ランを離陸する
なつかしの
祖国よ
さらば
使い慣れた
万年筆を"かたみ"に送ります。



深刻な気分も、感傷もありません。悔悟とも興奮とも無縁です。まるで外国へ長い旅に出るかのようなすがすがしさです。

死を目前にしてこのような手紙を書いた若者がいたことに驚愕します。


群青―知覧特攻基地より 知覧からの手紙 鎮魂 特別攻撃隊の遺書 今日われ生きてあり (新潮文庫) 特攻隊員の命の声が聞こえる―戦争、人生、そしてわが祖国 (PHP文庫)
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『経済学の終わり 「豊かさ」のあとに来るもの』 飯田経夫

経済学の終わり―「豊かさ」のあとに来るもの (PHP新書)
飯田 経夫
4569558569


 本書は、アダム・スミス、マルクス、ケインズの経済学を紹介しながら、経済学の大きな流れを解説しています。

 アダム・スミスは神の見えざる手にゆだねた自由主義。神の見えざる手は今では市場メカニズムなどと呼ばれ、その行き着くところは拝金主義となりました。

 マルクスによる市場経済批判は的確だったと著者はいいます。アダム・スミスが死んだ後、資本主義は本性をあらわにし、100年後のマルクスにはその暗黒面が見えていた、というわけです。スミスのいうほど、見えざる手はうまく機能しなかったし、資本主義の狂気が弱者を徹底的にいじめぬきました。

 経済史的にはマルクスの後に登場するのがケインズです。

 ケインズ主義では、「完全雇用」の実現と維持とが、政府の重大な責任とされ、そのためには政府は、財政・金融のマクロ政策を中心として、大きな努力を払うことが義務づけられる。つまり、アダム・スミス流の「自由放任」では、経済は自動的に完全雇用を達成することはできないというのが、ケインズの基本的な認識であった。こうして、「自由放任」は「終焉」した。

  
 自由主義がケインズの影響を受け、福祉国家の実験が行われます。

 しかし、ケインズ主義と福祉国家とがまことに輝かしく見えた「よき時代」は、長くは続かなかった。


 著者は福祉国家を失敗したと見ているようです。うまくいっている国もあると思うのですが、なぜか失敗だときめつけます。福祉国家がよくないのは「失業と飢えの恐怖」がなくなった「労働者がやたらに文句を言ったり、サボったりするようになる」「先進国病」になるからだ、と。

 どのような国なるかは運用次第、調整方法もいろいろあるでしょう。評価も価値観によりいろいろでしょうが、著者は断定的にダメ出しをします。

 一方マルクスの思想に基づいて共産主義や社会主義の国家が次々と誕生しますが、共産主義や計画経済は自滅してしました。その理由を著者は分析していません。

 私が考えるに、そもそも共産主義には理論的成熟がないことが問題です。実際の運用において個人もしくは党の独裁になってしまいました。経済力の弱い国が資本主義の成熟を経ないで社会主義化したのも失敗の理由の一つでしょう。資本主義のいい点悪い点をしっかり把握してその対策を打ちながら次の段階へ進んでいれば、より成熟した社会体制に行き着くのではないかと思います。

 ともあれ共産主義の失敗により、自由主義社会は大喜びをし、「それ見ろ、やっぱり規制は不要だ」と新自由主義へ突き進みました。結局のところ、アダム・スミスに戻ってしまったことに、「唖然とし、呆然とする」といいます。

 では、本当に拝金主義に突き進んでいいのだろうか、というのが著者の疑問です。著者は具体的な解決策は書いていません。豊かさとは何であるかと問うばかりです。


良い経済学 悪い経済学 (日経ビジネス人文庫) 日本の思想 (岩波新書) 思想としての近代経済学 (岩波新書) スティグリッツ早稲田大学講義録 グローバリゼーション再考 (光文社新書) 市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか (中公新書)
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『科学的社会主義の古典入門シリーズ エンゲルス 空想から科学へ』 浜林正夫

エンゲルス 空想から科学へ (科学的社会主義の古典入門シリーズ)
浜林 正夫


 本書はエンゲルスの著作の翻訳ではありません。エンゲルスの『空想から科学へ』の解説本です。

 今さらのマルクス主義ですが、昨年末から急激に増えた派遣切りで労働者の貧困問題にスポットが当たるようになったので、ここらでマルクス主義の入門書を読んでみようと思ったものの、やはりオリジナルは読みにくいので解説書を手に取りました。

 社会主義はマルクスが最初ではありません。それに先行する社会主義がありました。とりわけ、サン・シモン、フーリエ、オーエンなどが有名です。これらは観念論を脱することが出来ず、理想をうたうだけで、階級闘争の事実に行き当たらず理論は未成熟であったので、空想的と考えられ、マルクスとエンゲルスにより批判されました。これが「空想から科学へ」の第1章です。

 それに対して、唯物論を基礎とし、世界を変化するものと捉えるべきだとエンゲルスは主張します。さらに歴史を階級闘争の歴史として捉えるべきだとして、有名な言葉を記します。「これまでのすべての歴史は、原始状態を例外として、階級闘争の歴史であった」。階級とは経済的諸関係の産物です。生産手段を持つ資本という階級と生産手段を持たない労働者という階級の闘争の歴史であるというのです。

 さらに、マルクス主義の重要な概念である上部構造、下部構造、搾取、剰余価値の説明が続きます。これが第2章です。

 ちなみに剰余価値とは不払い賃金のようなものです。昨年末から話題になっている企業の内部留保はこれにあたります。今までマスコミで話題になることのなかった内部留保が派遣切りとセットで語られたのには正直驚きました。テレビや新聞もタブーとして触れなかったのに、一挙に表に出たという印象です。

 第3章では、資本主義の基本的矛盾が指摘されます。矛盾は主に4つあります。プロレタリアートとブルジョアジーの階級対立、全社会における生産の無政府性(無計画性)、産業予備軍(失業者群)の存在、恐慌(生産力の拡大と市場の拡大の矛盾)です。そして、その矛盾の解消としての社会主義が語られます。

 本書では、さらに序文の解説とエンゲルスの生涯とその仕事についても紙数を費やしています。まさに入門用に一冊という感じです。

 最後に簡単に感想を書いておきます。

 マルクス主義は資本主義の分析に関しては見るべきものはありますが、未来の社会のあり方についてはやはり想像でしかなく、科学と呼ぶほどの根拠はありません。

 たとえば、社会主義国家では生産の無政府性を解消するために計画経済をしてみた結果、需要と供給とアンバランスを生み出しました。この点に関しては市場経済の方がよっぽどマシでしょう。かといって、生産の無駄や過度な競争にマイナス面があるのも事実です。

 市場経済のよいところを活かしながらニーズに対応する生産という新たな需給関係を探り、失業者を減らすと同時にセーフティーネットを準備すること、バブルの反動としての恐慌にならないように投機的金の動きを規制することがこれからの社会の課題です。

 さらにはプラウト経済政策(経済民主主義)のように企業が、労働者のものとなるような社会持ち株制度的なものを普及させていくことができれば、かなりの矛盾の解消となるでしょう。

 『空想から科学へ』は社会主義の実験と経る前の社会主義思想を語っています。現在の目で読み直してみると、マルクス、エンゲルスのよい点、悪い点が新たに見えてきます。社会が大きく変動する今だからこそ、あえてマルクス、エンゲルスを読む意義がありそうです。


空想から科学へ (科学的社会主義の古典選書)
Fr´ed´eric Engels 石田 精一

空想から科学へ (科学的社会主義の古典選書)
自然の弁証法 抄 (科学的社会主義の古典選書) 賃労働と資本・賃金、価格および利潤 (科学的社会主義の古典選書) フォイエルバッハ論 (科学的社会主義の古典選書) マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫) 家族・私有財産・国家の起源 (科学的社会主義の古典選書)
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プロフィール

Author:Cozy
情報処理系講師、フリーライター。減速生活者にしてB級遊民。

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