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『世界金融危機』 金子勝,アンドリュー・デウィット

世界金融危機 (岩波ブックレット)
Andrew DeWit
4000094408


 リーマンショック以来、この本はよく売れているようです。

 今回の金融危機がなぜ起ったのかを多くの数字をあげて解説していて、定性的な議論に終わっていないところが特徴です。少ないページ数で把握したい人や、この未曾有の事態を冷静に捉えたい人に最適の一冊です。

 「影の銀行システム」として、銀行、証券会社は本体以外に運用会社を持ち、証券による信用創造機構を作っています。これら運用会社は、本体の連結対象外でプロ同士相対取引をしていたため、表面には出てきません。しかもFRB、SECの監督規制外でした。それが崩壊したのです。

 そのことと、証券化の手法によって、損失が確定きなくなっています。いくら公的資金を投入すれば事態が沈静化するのかがわかりません。しかもそれが世界規模で起っているのです。これは恐ろしい問題です。

 今回の金融危機の特徴として、信用バブルの崩壊と住宅バブルの崩壊が同時に起っていることがあげられます。信用収縮と景気後退の悪循環が起こり、あっという間に事態は悪化します。損失の確定ができないため、どんどん損失は拡大します。

 こういうこときには従来のマクロ経済政策をとっても効果は薄いといいます。

 たしかに金融緩和や流動性を供給すると、当面、金融機関の破綻は防げるが、金融機関が不良債権を抱えたままでは信用収縮自体を止められない。やがて再びバブルを引き起こすしか出口がなくなってしまうのだ。一方、多少の減税政策を実施しても、企業も家計も借金(債務)返済に追われているので、消費や投資の減退を止めるところまではいかない。せいぜいのところ従来のマクロ経済政策は、不良債権処理の間、景気後退を緩和するための補助的手段としてしか使えないのである。


 現在、石油の時代の限界がきています。エネルギー転換の時期にあたります。さらに「金融資本主義」の破綻が重なりました。二つの長期波動が重なった大変な時代です。しかし、著者は原油価格の高騰が続くとみています。つまり、資源インフレと資産デフレのダブルパンチだと考えていますが、これははずれました。(そういう意味では最悪ではないのかもしれませんが)

 経済予測をしている本を何冊か読みましたが、原油価格の下落を予想したエコノミストはいませんでした。消費の落ち込みは生産の落ち込みをもたらします。となれば、ガソリン需要が減少することも予測できそうなものですが、なぜエコノミストたちは原油が高騰したままだと考えたのでしょう。ちょっと不思議です。

 不動産バブルの崩壊の終わりが見えてきません。問題は10年不況となるかどうかだと著者はいいます。自動車バブルも崩壊し、不況はグローバル化します。しかし、エネルギーコストの暴騰が貿易障壁になるという予測はまたはずれています。むしろ心配すべきは保護主義でしょう。

 最後に著者は日本の将来を憂いています。

確実に言えることは、仮に覇権を失っても米国は依然として大国であり続けるだろうが、米国のブッシュ政権に追従してきた日本はひとたまりもないということである。


 さすが悲観派の雄、金子先生らしいお言葉です。

 将来を見据えた対策が立てられない今の政権のありようを見ていると、残念ながらこの言葉も真実味を増してきます。砂漠に水まきするような対策では、大きな効果は期待できません。

 オバマ氏が大統領に就任した後に、第二の崩壊が始まるかも知れません。


閉塞経済―金融資本主義のゆくえ (ちくま新書) 誰が日本経済を腐らせたか 増補版 (角川文庫) 波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る 強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書) 日本経済を襲うエキゾチック金融危機 (Mainichi Business Books) (毎日ビジネス・ブックス)
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『セーフティーネットの政治経済学』 金子勝

セーフティーネットの政治経済学 (ちくま新書)
金子 勝
4480058141


 経済学者の金子勝氏が「小さな政府」でも「大きな政府」でもなく、市場原理主義や中央計画型社会主義でもない、第三の道の社会改革を提言しています。

 それはセーフティーネットの再構築と財政中立的な制度改革によって実現されると金子氏はいいます。

 セーフティーネットは、「労働、土地、貨幣といった本源的生産要素と呼ばれる市場を中心として形成」されます。それらは生産され消費される一般的な商品とは性格を異にし、「本来的に市場化になじまない性質をもって」います。だからこそ、「セーフティーネットとそれに連結した制度やルールが必要」なのです。

 これらのセーフティーネットは現在主流の経済理論、とりわけ新自由主義に反することであり、危機における「例外的」な措置と考えられていて、理論の中に正当な位置を得ているわけではありません。そこに問題性があるというのが金子氏の考えです。

 年金・失業保険・健康保険といった社会保障制度を最終的セーフティーネットとして、それに連結して熟練や技能の社会的制度化(つまり教育制度・職業訓練制度や資格制度の整備、労働基準法、あるいは労働組合の法的承認と雇用・仕事や賃金体系・解雇などのルール化)が存在しないと、労働市場は安定的に機能しない。



 現在の社会状況を見ればわかるように、これらセーフティーネットの不備のためにまったく労働市場は安定的に機能していません。契約の打ち切りと同時にあっという間にホームレス化してしまう派遣社員がまったく守られていないことは明白です。(セーフティーネット以前に現在の派遣労働法が異常ですね)

 不安を感じているのは非正規雇用の派遣社員ばかりではありません。正規雇用であってもどうなってしまうのか不安な人々は支出を抑え、ひたすら貯蓄に励みます。結果的には経済は縮小せざるをえません。

 もちろん、多様な消費スタイルはあって当然です。浪費好きな人がいたり、ほどほど消費してちょっとだけ貯蓄する人がいたり、まったく消費に関心を示さない人がいます。しかし、現在の消費マインドの冷え込みは自分が好きでやっているのではなく、恐れや不安からそうせざるを得ないという一種閉塞的な状況なのです。

 消費マインドの冷え込みは雇用の不安定さだけが原因ではありません。年金政策に不信感を持ち、将来に安心できないことも大きく影響しています。

 しかし、将来不安を払拭するほどにセーフティーネットが十分であれば、生活防衛のために極端な節約に走る必要はありません。それでも不況は来ることはあるでしょうが、パニック的な反応をする必要はないのです。

 土地や住宅に関してもセーフティーネットは必要です。

 具体的には、住宅地を買い占めや投機から守ったり、環境や景観を守ったりするために、都市計画規制が必要になる。あるいは低所得者に住居を保障するために、公営住宅や家賃補助や減税政策などの公的住宅政策が必要になる。逆にいえば、これらの諸制度がないと、土地市場は安定的に機能しない。



 土地に対する投機を制限しなければ、土地バブル、不動産バブルが容易に発生します。また、その崩壊も起こります。それがどれほど日本や世界にダメージを与えたか、あるいは現在与えているかはすでに知るところです。

 現在、解雇された非正規雇用者のために政府や自治体が付け焼刃的に住居の提供などを考えていますが、本来ならばこのような事態に備えて制度化していなければならないことですし、企業が住居の提供を暫く続けるようなルール作りをしておくべきでした。

 貨幣については労働や土地とは性格が違います。貨幣においては信用が重要な意味を持ちます。そのため「銀行システムが機能するには人々が信認する制度やルールが不可欠」と金子氏はいいます。

 貨幣の世界を市場に任せれば任せるほど、市場が「無限」に信用を拡大する可能性を秘めているがゆえに、人々の信認が揺らぎ、貨幣が暴力性を発揮して市場を麻痺させる潜在的危険性を増幅させてゆく。こうした事態に直面する度に、中央銀行の最後の貸し手機能や預金保険機構といった金融的セーフティーネットが形成され、それに連結する形で金融制度ができてくるのである。



 レバレッジをきかせてバブルを巨大化し、それが破裂すれば、信用収縮によりパニック状態に陥るのが現在の金融資本主義の世界です。こうした不安定さを抑えるにはなんらかの制度、ルールが必要なのはもはや明白です。市場に任せているだけでは信用収縮を抑えることはできません。 

 さらに金子氏は制度改革として、税方式での年金改革、地方への税源移譲を提言しています。

 

年金改革では、基金を取り崩しながら保険料を社会保障税に改めるだけであり、地方分権改革では、所得税の基礎税率部分を住民税に移し変え、それに見合う補助金をカットするだけである。いわゆる財源の入れ替えだけで、仕組みを大きく転換させるのである。これにしたがえば、福祉の拡充が「大きな政府」を生み出すことにはつながらない。



 大きな政府でもなく小さな政府でもない財政中立的な制度改革ということです。

 また、保障制度の改革に際しては「三つの福祉政府体系」として、中央政府、社会保障基金政府、地方政府の三者によって構成されるべきだと主張しています。

社会保障基金に税務査察権限を与えながら、独自の政府として中央政府に対する「独立性」を与え、透明性を高めてゆくことが必要になる。同様に、健康保険制度にも、医師会代表と患者代表が話し合う<場>が設定されねばならない。



 要は既得権を打破するということでしょう。「キーワードは、権力の分散・透明性・参加」ということだそうです。

 以上、金子氏の主張の概略を見てきました。

 なかなかすぐれた提言だと思いました。今回のリーマンショック以降の状況を見ているとなお説得力が増してきます。

 しかし、政官財の癒着の中でこのような改革は望めそうもないという意味では、安易に希望を持つわけにもいきません。政治的に大きな変化がなければなりません。民主党が政権をとるだけの変化ではとても足りない、もっと大きな変化が必要ではないでしょうか。


逆システム学―市場と生命のしくみを解き明かす (岩波新書) 閉塞経済―金融資本主義のゆくえ (ちくま新書) ダマされるな!―目からウロコの政治経済学 (Keiブックス) 誰が日本経済を腐らせたか 増補版 (角川文庫) 市場 (思考のフロンティア)
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『日本語が亡びるとき』 水村美苗

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
水村 美苗
4480814965


 インターネットで(良くも悪くも)評判ということで読んでみました。問題提起としては面白いのですが、著者の偏った価値観があまりに濃厚で、思い込みの強さばかりが目立ちました。

 著者は現在の日本文学の衰退を嘆いています。その原因を、英語の世紀になり日本語の「読まれるべき言葉」が読まれなくなったこととしてます。さらには日本語教育の現場である学校教育において近代日本文学が軽視されていることを大きな問題と考えています。

 しかし、いい小説が書かれないとしたら、それは文学以外に人材が流れていることが一番の原因でしょう。他のメディアがあふれ、小説以上に盛んになれば、そちらに優秀な人は流れます。私は、映画、マンガ、映像や音楽の世界にどんどんいい人材が流れることになんら問題を感じません。

 また、近代日本文学に比べて現代文学の作品がそれほど落ちているといえるかどうかも疑問です。大江健三郎や村上春樹は同時代的に世界で評価されています。文学好きの人は批判するかもしれませんが、現在の日本文学を代表する作家は司馬遼太郎です。売上的に司馬氏は無視することは出来ませんし、多くのアンケートで司馬氏の小説はたいがい上位に来ます。

 著者はあまりにも戦前の日本文学を高く評価しすぎているという印象です。信仰に近いものを感じます。自分がアメリカで送っていた孤独な生活、とりわけその内面生活を支えていた日本の近代文学を大事にする気持ちはわかりますが、ここまで持ち上げられるとしらけてしまいます。

 著者は現在の日本の国語教育では、近代日本文学を読める人が少なくなると危惧していますが、これもまた近代日本文学至上主義のなせるわざです。

 国語教育では機能的な文章を基本的に学ばせるのがよいでしょう。文学はメインではありません。文学に関心がある人は、自分の時間を使って読めばいいのです。近代文学がメインでないことになんの問題があるのかがわかりません。

 わかりやすく論理的に書かれた現代文の読み書きを教え、近代文学も多少は教科書に載っていて、古文と漢文がある。バランス的にはこれでいいでしょう。基礎的な教育が社会人を養成することを目的とするならば、その方が近代文学一辺倒の教育よりも実のある教育となるはずです。むしろ、実用的な文章の読み書きすらできていないことが現代の教育の問題点です。鴎外や漱石が読めなくてもさほど問題はありません。

 もし、近代文学に興味を持った学生がいるのなら、高校の選択科目に近代文学の授業があったり、大学の教養課程に近代文学があればいいじゃないですか。国文科を用意する大学だってあります。

 将来、英語で文学が書かれるかもしれないと著者は恐れていますが、現時点で英語で小説を書く日本の小説家はいませんし、その兆候もありません。取り越し苦労という気がします。

 インターネットでいかに英語での文章が多くなろうとも、日本人の大多数は日本語で書き、日本語で読んでいます。

 たとえば、こんな記事。

英語を超えた日本語ブログの投稿数,その理由は?

ブログ検索サービスを提供する米テクノラティが4月5日に発表した調査結果によると,2006年第4四半期は投稿数で日本語ブログが世界最多だった(参考リンク:「The State of the Live Web」,図)。実に世界のブログ投稿数の37%が日本語によるもので,事実上の世界標準語である英語や,母語人口で世界最多の中国語を抑えての1位である。


 著者の考えからすれば、インターネット上で日本人は英語を書き、英語を読むようになるはずですが、実際にはそうなっていません。むしろ驚異的な日本語の記事量、占有率です。

 もっとも著者の水村氏なら、読むに値しない文章だと評するでしょうが。

 日本語で書かれた日本文学を守るために近代文学を教えるという理屈も説得力に欠けます。著者はあまりに現代文学を憎んでいて、小説以外の文章を軽視しているために、日本近代文学万能主義に陥っているようです。

 とはいえ、最初から最後までつまらない本ではありません。面白く読んだ部分も多くあります。普遍語、国語、現地語の関係。日本語が成立する過程での大学の役割と大学から外れて在野となった小説家の役割。あちこちからの引用や雑学的な部分など。

 ネット上には本書に関する論評(や論争)があふれています。私はほとんど読んでいませんが、話のネタに本書を読んでから、論争に参加してみるのも悪くありません。


↓話題の発信源
水村美苗「日本語が亡びるとき」は、すべての日本人がいま読むべき本だと思う。

今世紀最重要の一冊 - 書評 - 日本語が亡びるとき

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『テロリストがアメリカを憎む理由』 芝生瑞和

「テロリスト」がアメリカを憎む理由
芝生 瑞和
4620315419


 9.11アメリカ同時多発テロ事件のほぼ1年後にパレスチナ問題に詳しいジャーナリストが書いたノンフィクションです。

 アメリカの人々の反応や街の様子などがジャーナリストらしい低い視線から捉えられていて、テレビや新聞などで知っている事件とは違った印象を与えます。

 事件の直後、アメリカの白人たちはなぜ自分たちが攻撃されるのかがわからず、不安におびえ、屈辱感も感じていました。彼らはアメリカがイスラエルを支援することでパレスチナやアラブにどんなことをし、どれほどの被害を与え、人を殺しているのかわかっていませんでした。もちろんそれはほとんど報道がされていないからですが、その結果どれほどの憎しみを生んでいるのがわかっていませんでした。そして当然ながら、自分たちが攻撃の対象となっていたこともわかっていませんでした。

 時間が少し立つと白人たちは過剰に反応しはじめます。国内にいるアラブ系の人たちやイスラム教徒に対する警戒心をあらわにし、攻撃します。こうした異なる集団への偏見から生まれる暴力などをヘイトクライムと呼びます。ヘイトクライムは相手がどんな人間なのか詳しいことなど調べもせずに、なされました。ビンラディンを支持していないひとびとにもヘイトクライムは向かいました。ひどいときには外見が似ているというだけでアラブ系でもイスラム教徒でもない人に向かうことがあります。

 国家レベルにおいてはアフガニスタンの攻撃、イラクへの攻撃とつきすすむのですが、タリバンへの攻撃はやや不当です。ビンラディンをかくまっているから、というのが理由ですが、それだけで攻撃し、しかも民間人への被害も多大に出すとはいささかやりすぎです。イラクへの攻撃の理由はまったくの濡れ衣でした。

 ブッシュはイスラムではなくテロリストとの戦いだと強調していましたが、実際には無差別に近い攻撃をしていました。逆から見ればブッシュの行動は悪魔の所業です。

 このような国内的にも国際的にも無謀なアメリカの反応はなにもこのときはじまったのではなく、アラブと西洋諸国の長い歴史の中でも繰り返されたものでした。イスラエルがどれほどの被害をパレスチナに与えたかを考えると、テロリストがアメリカ政府や軍隊だけではなく、民間人も攻撃するのも、けっして過剰な報復ともいえないことがわかります。(どちらも非道でありますが)
 
 日本人にはわかりにくく、また関心も持ちにくいパレスチナ問題の歴史を本書はわかりやすく解説していますし、重要な場面でアラブにいた著者はジャーナリストらしい臨場感で伝えてくれます。

 金持ちの息子であるビンラディンがなぜテロリストになったのかを解説したくだりはなかなか面白いものがあります。イスラムの理想と西洋化の矛盾が彼をテロリストにしたともいえるのですが、それはつまりグローバル化により彼はテロリストになったともいえるわけで、グローバル化の矛盾についても考えさせられます。

 アメリカVSイスラム過激派の構図がいまいちわかりにくいという人は本書を読まれるとある程度はすっきりするでしょう。分量も少なめで読みやすいので手軽に手に取れる入門書です。

大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」 (講談社プラスアルファ新書)
池上 彰
4062721279
イスラム教入門 (岩波新書)
中村 広治郎
4004305381


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『2010年 資本主義大爆裂!』 黎明は極東の日本から

 プラウト経済政策は経済民主主義政策でもあるとバトラはいいます。

 経済民主主義とは企業の形態における民主主義です。

 従業員がその企業の株式を分け持つということだ。たとえば、株式の51%を従業員総体が持つ。そうすると、従業員総体が会社に対して発言権や議決権を行使できるようになる。

 現状では富裕者である大株主が取締役やCEO、社長の選任をおこなっている。そうやって選ばれたトップは、当然、大株主=富裕者の利益を最優先し、従業員=労働者とは対立する存在となってしまう。


 従業員が経営者を選ぶことで労働者に不利な会社経営をさせないようにできるというわけです。現在のアメリカの経営者のように莫大な報酬を受け取ることもなくなるでしょう。(愚かな選択をする可能性もあるとは思いますが)

 では、このようなプラウト経済政策、経済民主主義はどこから生まれてくるのでしょうか。

 バトラは「黎明は極東の日本から」やってくるといいます。

 それは、すでに触れたように日本が1950年代から、1970年代前半まで、まさにプラウト経済民主主義的な経済政策をおこなっていたことが一つの根拠だ。
 当時、企業と労働組合は激しく対立しながらも、会社経営、労働条件などについて建設的な運営が実現されていた。賃金格差は非常に小さかったし、終身雇用、年功序列制度も、ほどよく機能していた。


 当時のことを振り返って、日本は最も成功した社会主義だったという人もいます。アメリカは日本を「資本主義の仮面をかぶった社会主義だ」と非難していました。実際にどれほど社会主義的だったかの評価はともかく、今のような剥き出しの競争社会、自由主義ではなかったのは事実です。

 日本人自身から見ると、既得権で守られて、組織が硬直化し、効率の悪い経済だったともいえますが、全体としてみれば、今よりもよい面があったことは事実でしょう。

 少なくとも、その後、アメリカ的な資本主義に向けて大きく舵を取った日本がいい国になったという実感はまったくありません。

 今この時期だからこそ、日本は過去のよい点を思い出しつつも、これまでにない新しい経済のあり方を目指す時期に来たということなのかもしれません。

 しかし、これからの日本に希望が持てるとも言いがたいようです。日本は富裕者の時代の衰退期に入っています。多くの混乱が訪れるはずです。その混乱と衰退の中に新しい光が生まれることを期待したいと思います。

2010年資本主義大爆裂!―緊急!近未来10の予測
Ravi Batra Pema Gyalpo ペマ ギャルポ

2010年資本主義大爆裂!―緊急!近未来10の予測
資本主義消滅最後の5年―ラビ・バトラ緊急予告 アメリカ発 2009年世界大恐慌 新世紀の大逆転―夜明けは日本から始まる 新たな黄金時代―腐敗政治と経済混乱が新時代の革命を生む 日本国破産のシナリオ―破滅から黎明へ 光は極東の日本から
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『2010年 資本主義大爆裂!』 プラウト経済政策とは

 「経済民主主義政策」=「プラウト経済政策」においては、労働条件・環境や生活環境、周辺・地球環境に関して、次のような項目を目標とする。

1、高い賃金
2、低い税金
3、広くて安い持ち家
4、適正な物価
5、充実した福祉
6、継続性のある環境保護


 バトラは、人間の欲望が膨張しているために必要もないものを欲するのだといいます。衣食住などの必要な程度はたかが知れています。一人が100着の服を持つ必要はなく、一人が食べる量にも限界があり、住むに必要な広さもさほどではありません。しかし、過剰な欲望により多くのモノやお金が渇望されています。

 プラウト経済政策によって、一人ひとりが必要な「衣・食・住・教育・医療・保険」をまかなえるだけの所得が保証され、すべての人に分配されれば人間の「欲望」のありようは変化し、「過剰な欲望」は生まれなくなるだろう。


 北欧型の福祉社会のようなイメージでしょうか。一部の人に富が集中するのではなく、富が広くいきわたるようにする政策です。

 プラウト経済政策は、「完全な平等分配」を目指すものではない。勤勉な人にはその努力に見合うだけ、そうではない人には、その成果に見合うだけの分配をおこなうことを目指す。
 プラウト経済政策は、いわゆる「悪平等」を排除するのだ。労働が正当に評価され、納得のいく分配がおこなわれれば、人は次第に欲望をコントロールすることができるようになるだろう。 


 それは共産主義でも社会主義でもありません。バトラは市場経済を肯定しますから、社会民主主義かもしれませんが、その点についての言及はありません。ともかく彼はプラウト経済政策と呼んでいます。

 日本の現状では、フルに働いても生活が成立しないような低賃金、無保証の労働者がいます。非正規雇用の労働者たちです。彼らは簡単に首切りされる都合のいい安全弁です。不況となれば、いきなりホームレス状態に追い込まれてしまいます。

 このような労働のあり方は富裕層に有利、貧困者の不利というだけではありません。社会にとっても不安定要因となります。生産性の賃金が追いつかなければ、必ず需要と供給のバランスは崩れます。金利の引き下げ、そして賃金が増えない中でのバブルの発生。やがてなにかがきっかけとなりバブルははじけます。

 その「つけ」の多くは既得権を持たない人が払わされることになります。収入減、失業、借金、最終的な増税などです。富裕層はリストラという名の首切りで急場をしのぎ、政治家は公的資金という名の税金を投入すれば仕事をしたことになります。

 結論は、賃金を引き上げる政策こそが、長期的視野で見れば、法人、個人にとっても、政府にとっても最良の政策、ということだ。


 残念ながら、今回の不況ではその政策は使えそうもありません。もはや手遅れです。

 やるならば企業業績が過去最高といわれていた時期、2007年の半ばまでにやっておくべきでした。今は消費の冷え込みによる減産と銀行の貸し渋りで、深刻な景気後退局面に入ってしまい、企業の倒産リスクは高まるばかりです。

 (つづく)

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『2010年 資本主義大爆裂!』 その2

2010年資本主義大爆裂!―緊急!近未来10の予測
Ravi Batra Pema Gyalpo ペマ ギャルポ
4901318640


 バブルが起る原因をラビ・バトラは、生産性の上昇に伴って賃金が増えないからだといいます。消費を促すために金利を下げれば、お金を借りてでも家を買ったりする人が増えます。企業はより多くを内部保留のお金がまわせます。そうして生まれた余分なお金が住宅価格や株価の異常な上昇をまねきます。バブルを発生させるのです。

 生産性の上昇に伴って賃金を増やしている間はアメリカでも日本でも経済はうまく回っていました。たとえば日本の経済成長期は賃金の上昇を伴っていました。ところが、日本はアメリカ型の経営を真似をして労働分配率を下げているのです。おかげでバブルの発生が頻発するようになりました。

 そして、日米ともに低賃金労働者のお金を富裕者につけかえる政策、たとえば富裕層に有利な減税と増税により格差を拡大させています。

 「格差の拡大」、「腐敗の膨張」、「モラルの劣化」それが、資本主義経済の崩壊を確実に引き寄せている。


 現在、アメリカの金融機関の多くは実質的に国家管理下におかれています。空売り規制などで株式市場も管理され、GMのような民間企業ですら国家管理化に置かれようとしています。すでに自由主義を標榜するにはお寒い現状となっています。

 しかし、それでうまくいくというものでもないでしょう。

 現在はまだ民間企業の問題に視線が集まっていますが、やがて地方自治体や国家の問題へと焦点が移ってきます。地方自治体は財政破綻しないでしょうか。異常な財政出動を繰り返しているアメリカのドルの信頼性、米国債の信頼性はどうなるでしょうか。もちろんアメリカだけの問題ではありません。

 そのときラビ・バトラの「予測7 アメリカの資本主義は数年内に終焉する」「予測8 2009年後半から2010年前半に世界的な重大危機」が現実味を帯びてくるかもしれません。

 アメリカ型の資本主義、つまり自由な利潤の追求ではうまくいかないのなら、次はどうすればいいのでしょうか。

 ラビ・バトラは「プラウト経済政策」が唯一の道だといっています。プラウト経済政策は資本主義、社会主義、共産主義のメリットを総合、発展させたものです。

 プラウトとは「プログレッシブ・ユーティライゼーション・セオリー(Progressive Utilization Theory)」の略です。日本語にすれば「進歩的活用理論」となります。

 以下、プラウトの基本的な考えを引用します。

 その理論の「3つの柱」となるのは、
1、世界中の資源とその活用の可能性は、人類すべての共有財産と認識する
2、資源を最大限に効率よく活用し、それを合理的に配分し、真の意味での個人と社会の進歩を目指す
3、諸悪の根源である富の集中を排除した、倫理的で合理的な利益配分システムを作り上げる


 プラウト経済政策は世界から貧困をなくすことを目指すともいいます。

 資本主義や社会主義のいいところを組み合わせたとして、それだけでうまい経済政策が出来るわけでもありません。もう少し具体的な内容を見ていきたいと思います。

 (つづく)

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『2010年 資本主義大爆裂!』 ラビ・バトラ

2010年資本主義大爆裂!―緊急!近未来10の予測
Ravi Batra Pema Gyalpo ペマ ギャルポ
4901318640


 ラビ・バトラの2008年2月発売です。今のところもっとも新しい著作です。彼の新しい予測と考え方、とりわけプラウト主義経済についての説明が書かれているので、一冊だけを読むなら本書をお勧めします。

 本書でバトラは10の予測をしています。

 予測1 原油価格は100ドルを超えて高騰し続ける

 予測2 「サブプライム住宅ローン危機」は再三爆発する

 予測3 2008年、米大統領選挙は民主党の勝利

 予測4 アメリカの大企業の破綻が続発する

 予測5 日本の好況は2008年半ばか末まで

 予測6 2009年に、イランが新たな中東の火種となる

 予測7 アメリカの資本主義は数年内に終焉する

 予測8 2009年後半から2010年前半に世界的な重大危機

 予測9 中国にも2010年に危機到来

 予測10 日本で新たな経済システムの胎動が起こる


 バトラは原油バブルと住宅バブルの二つを指して「この二つのバブルの崩壊が共振し、または衝突するときが、アメリカ経済が最後の破綻へのプロローグを迎えるとき」と書いています。すでに二つのバブルが崩壊しましたっから、アメリカは最後の段階に入ってきたということになります。

 大統領選では、民主党オバマ候補が勝利しました。

 リーマンブラザーズ破綻。ビッグ3は事実上の破綻で政府の援助を受けます。全米2位の家電量販店サーキット・シティ、新聞大手トリビューンも破綻のニュースが入ってきました。そのほか、金融関係を中心に合併や身売りの話は多数あります。おそらく来年もこの手のニュースが続くことは間違いありません。

 日本の景気は今年に入って大いに減退、そして後半になり急激に悪化。

 どうやら予測の1~5は当たっています。恐るべしラビ・バトラ。

 バトラの予測は経済の知識と瞑想とを組み合わせているそうで、ややオカルト的な説明がついています。そのせいでとんだ眉唾だと捉える人が多いでしょうが、さすがにこれだけ当てられると、デタラメ、偶然とは思えなくなります。

 残りも当たるのでしょうか。しかも予測6からはとんでもない衝撃的な予測ばかりです。

 バトラは中東(イスラム世界)に関しては、知識人(聖職者)の時代から富裕者の時代へと移り変わるといいます。そして、富裕者はテロの背後にいるのだ、と。

 (富裕者は)後ろで糸を引いて、自爆テロを「ジハド」だと賞賛し、奨励しているだけだ。そして、テロの寸前に、テロによって高騰したり下落する株を売り買いして、莫大な利益を上げている。


 確かにテロが予測できれば、というか自分たちで操作すれば、高値での株の売り抜けと、空売りでのダブルで儲けることができます。でも、そんなことが…。

 そしてアメリカが恐れるのがイランの核ミサイルの保有です。さらにテロ組織に核がわたっていく可能性もあります。

 本書では書かれていませんが、アメリカが北朝鮮と適当な手打ちを行おうとしているのは、北朝鮮の核保有を実質的に認める代わりに北朝鮮からの核の拡散は防ぐという意図があるといわれています。

 経済的に弱っていくアメリカに対してイスラム世界の反抗が高まることは大いに予測できることです。 

(つづく)

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『日本国破産のシナリオ』 ラビ・バトラ

日本国破産のシナリオ―破滅から黎明へ 光は極東の日本から
Ravi Batra Pema Gyalpo ペマ ギャルポ
4901318403



 ラビ・バトラの著作を読むのはこれで3冊目です。しかし、今回はかなりよくないです。そもそも本人が書いている部分がかなりすくなさそうです。

 原著に加えて出版社「あ・うん」で情報を加えたと巻末に記述されていて、参考文献も日本での出版された本ばかりがあげられています。本の作り方がいい加減です。(前作もそうでしたが、今回は水増しの度合いが増えているようです)

 予測的にもはずれています。日本の長期金利が上がるとか、ハイパーインフレに突入すると書いてありますが、ご存知のように金利はさらに下がり、デフレの懸念も高まっています。

 いろいろな予測をあててきたラビ・バトラもこと日本に関しての予測ははずれそうな雰囲気です。

 日本が極東の光になるという予測に関して。

 「日本のハイテク技術が極東の光となって、世界に安定をもたらすとすればそれは最高だ」と書かれてあって、日本に期待するのは環境問題、エネルギー問題の解決のようです。これは誰もが思うところでしょう。今後はこういう技術を開発した国が大きく発展をします。

 でも、それだけのことでしょうかね。あっけない話です。

 次に読む本に期待することにしましょう。

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『サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉』 春山昇華

サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉 (宝島社新書 254) (宝島社新書)
春山 昇華
4796661557


 本書はサブプライムローン問題のわかりやすい解説書です。2007年11月に発売されています。

 具体的な事例を紹介しながら、素人にもわかるように説明していますので、現在の世界金融不安、世界同時不況の入り口であるサブプライムローン(信用度が低い人向けの住宅ローン)問題がなぜ起きたのかを知りたい人にお勧めできる一冊です。

 本書を読んで一番感じたことは、関係者の無責任ぶりであり、モラルハザード(倫理の欠如)です。その原因となったのは債権の証券化と格付けといえるでしょう。

 本来、住宅ローンを貸す側の銀行や住宅ローン専門の金融会社は相手の信用度をしっかり把握しなければなりませんし、焦げ付いたときの処理もしなければなりません。とりわけサブプライムローンのような信用の低いローン(であるがゆえに高金利)は焦げ付く可能性が高いのです。しかし、住宅ローンを債権としてフェニーメイや証券会社に売ってしまえば、後のことなど知ったことではありません。(ただし、2~3ヵ月後に返済遅延が発生した場合、ローンを買い戻さなければなりません。といっても超短期です。)

 証券会社は複数の債権と組み合わせて複雑な証券化商品にして投資家に売ってしまえば、後のことなど知ったことではありません。このとき、重要なのが金融工学です。安全な金融商品という衣装をまとわせるための技術です。金融工学がリスクを覆い隠した金融商品を作ります。

 この金融商品には格付け会社がいい評価をしてくれます。格付け会社は金融証券を発行する側から手数料を受け取ります。しかも法的責任はありません。甘い評価をし、どんどん金融商品が売れれば、どんどん儲かります。

 証券化商品などの金融商品を買う側(投資家)は、ハイリターンでありながらトリプルAの評価がついた安全な商品を買ったと思い込みます。リターンのよい安全な商品があること自体が怪しいのですが、世界中で大量に購入されてしまったのです。

 住宅ローンの契約を結ぶブローカーは契約件数を増やせばどんどん儲かります。彼らはただひたすら低収入の人々に高金利の住宅ローンを組ませます。ローンそのものに手数料のやたら高いインチキなものがあったり、返済に関する説明にもいかがわしいものがあり、そのことも大いに問題でした。

 では、住宅ローンを組む側のアメリカ人たちはどう考えたのでしょうか。彼らは裕福になれればいくら借金してもかまわないのだと考えていました。日本人ならば、無理だと思うような借金でも平気でしてしまう国民性もあります。極端な場合、「自分が死ぬときに、住宅を処分して元利金を返済すれば良い。そのときまで生活が破綻しなければよい」と考えていたようです。

 もちろんこれが成立にするには住宅価格が上がり続ける必要があります。しかし、それは幻想でした。結局は、ごく当たり前に住宅価格は頭打ちになり、下がり始めました。

 サブプライムローン問題は、ここがおかしいと一点だけに問題があるというよりも全体に問題がありました。強いて理由を挙げるとすれば、無責任を促進した証券化と格付けでしょう。

 証券化して転売できるからこそ、あとのことはどうとでもなれと無責任になってしまいます。そしていい加減な格付けで、客を騙していたわけです。

 以上、かなり単純な話としてまとめてしまいましたが、本書にはもっと細かい話や問題点、関連する重要な話題もたくさんでてきます。関心を持たれた方は、ぜひご自分でお読みになってください。

サブプライム問題の正しい考え方 (中公新書)
倉橋 透

サブプライム問題の正しい考え方 (中公新書)
金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書) サブプライム後に何が起きているのか (宝島社新書 270) (宝島社新書) アメリカの経済政策―強さは持続できるのか (中公新書) サブプライム問題の教訓―証券化と格付けの精神 サブプライム危機はこうして始まった 決定版 アメリカからの最新リポート
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『論争 格差社会』 文春新書編集部編

論争 格差社会 (文春新書)
文春新書編集部
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 格差問題について言及したさまざまな論文、エッセイ、対談、鼎談などを収録しています。誰かと誰かが議論を繰り広げているわけではありませんが、格差をめぐる言論には様々なものがあることを知ることができる点は評価できるかもしれません。

 面白かった話をひろってみましょう。

 大阪大学教授の大竹文雄氏の統計分析による論文から。

 一般に資産の格差は年齢が低いほど格差は少なく、年をとるにつれて格差が広がるのですが、最近の傾向としては、30歳未満の層で格差が広がっていることが統計で示されています。これは特に若年者に広がる非正規雇用の増加による影響でしょう。

 また、高齢化により格差の大きな年齢層が増えたことで全体の格差が広がったとの指摘があります。つまり、高齢化が全体の格差を広げているというのです。

 稲葉振一郎、本田由紀、若田部昌澄の鼎談では「ニート問題」が日本では本来のイギリスでの定義を離れ、異常に数字を水増しされて問題化された事実が指摘されています。その水増しをして、一躍ニート論者として注目されたのが玄田有史氏です。

 ニートやフリーターが問題化すると、それを扱う行政法人の存在が正当化され、存続し、出版社は特集記事を組み、新書を出します。そこで執筆して儲ける人、儲かる出版者が出てきます。さらには、学会、NPO、市民運動と「ニート産業」はひろがっています。彼らにとって格差問題が食うためのネタになっているのです。(格差がないといっているのではないですよ)

 最後に、渡部昇一と日下公人の対談があまりに的外れでお気楽だったので紹介しておきます。

 対談は昔の金持ちはよかったという話に終始します。

 昔の金持ちは金持ちは簡単にできたという話では親から引き継いだ資産により利益を出すことが出来たことをことをさも金持ちの余裕ある金儲け話として語っていますが、これこそまさに機会の不平等の問題ですが、その問題性などまったく意に介さないところがすごいです。

 昔の金持ちが貧乏人の子どもを学校に入れてあげた話、戦争の出征時に多額の餞別を与えた話などを楽しそうにしていますが、最初から富の分配が適切になされていれば、施(ほどこ)しなど不要なことです。

 私などは金持ちが貧乏人に施す社会ではなく、最初から貧困を生まない社会、皆が自分の生活を支えていける社会が望ましいと思うのですが、渡部、日下両人は格差の存在を施しの美談によって正当化してしまいます。これはもう詭弁とかそういうレベルの話ではなく、価値観がまるで違うのでしょう。

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)
橘木 俊詔

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)
格差社会の結末 富裕層の傲慢・貧困層の怠慢 労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書) 日本の経済格差―所得と資産から考える (岩波新書) 論争 格差社会 (文春新書) 新平等社会―「希望格差」を超えて
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