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高等遊民とB級遊民

 高等遊民とB級遊民の違いをまとめてみましょう。

 第一に、高等遊民は裕福な親から経済的に援助してもらっていて働く必要がありません。対して、B級遊民は家庭にそれほどの経済的な余裕はなく生活に必要なだけは働かなければなりません。この点が一番の違いです。

 第二に、高等遊民は高い社会階層に属した高学歴のエリートです。対して、B級遊民は高学歴であることは要求しません。社会全体が高学歴化しているので、ちょっと学歴があったとしても高等と名乗るのもおこがましいでしょう。

 第三に、高等遊民はとても知的で高級な趣味を持っています。対して、B級遊民はただ好きなことを優先したいというだけで、とくに高尚な趣味を誇るわけではありません。かつての学生にみられた教養主義も不要です。

 まとめると、経済的にも学歴的にも文化的にも高等ではないという意味でB級なのです。

 これだけだと、B級遊民は高等遊民の劣ったものという位置づけになってしまいますが、いえいえB級遊民にはB級遊民なりの価値観があります。それを次の章で説明したいと思います。

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)
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高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)
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テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

『それから』の代助とギリシャ哲学

 代助の考えの中で注目すべきは「職業の為に汚されない内容の多い時間を有する、上等人種」という部分です。代助はありあまる自由時間を使って思索する生活は上等で有意義で、労働よりも上だと考えています。代助を有閑階級のひとりにすぎないといってしまえばそれだけですが、彼自身は自分のことを贅沢三昧の消費に現(うつつ)をぬかすただの有閑階級とは違うと思っていたようです。

 それにしてもいったいどこからこんな思想が出てくるのでしょうか。おそらく代助が学生時代に読んだ哲学書のせいではないかと私は推測しています。漱石はそんなことは書いていませんが、彼の考えには古代ギリシャ哲学の伝統的思考が反映されているように思えます。

 古代ギリシャの哲学には労働よりも哲学を上位におく傾向が強く見られます。額に汗して働くよりも、真理についての認識活動である観想(テオーリア)を人間らしいものと考え、賛美します。

 たとえば、アリストテレスは『ニコマコス倫理学』において、人間の本質は高度な精神活動にあるとして、実践するようにと勧めています。なぜなら観想の生活にこそ永続的な幸福があり、幸福こそ人間の求めるものだからだそうです。

 このような観想の生活は暇がなければできません。だからアリストテレスは「幸福は閑暇に存すると考えられる」と書いています。その反対の非閑暇的な活動としては軍事と政治をあげていますが、一般的な労働である生産活動など眼中にない点に注意してください。

 しかも観想の生活は軍事と政治に費やした残りの時間の暇つぶしではありません。アリストテレスは幸福な生活とは(その究極が観想の生活ですが)「真剣であり、遊びではない」といいます。このあたり代助の考えによく似ています。

 現代日本人の一般的な感覚からすれば、まず労働があり、その余暇として哲学書を読むなどの趣味の時間があると考えます。読書や思索などというものは、パチンコなどの暇つぶしよりは高尚ですが、たくさんある余暇活動(レジャー)のひとつにすぎません。アリストテレスの思想は順序が転倒しているように見えます。

 しかし、アリストテレスにはアリストテレスなりの理屈があります。いや、理屈というよりもそう考えるのが自然である理由があります。

 古代ギリシャは奴隷制の発達した社会でした。生産のおもな担い手は奴隷でした。奴隷の所有者である自由な市民は政治に参加し、戦争をします。肉体労働を中心にした生産活動はもっぱら奴隷の役割でした。都市部に関していえば、アテネの人口の三分の一は奴隷であり、召し使いなどの家内奴隷が中心でした。

 こうした社会制度が人々の思考に反映し、労働蔑視の傾向を生み、またその哲学にも反映し、アリストテレスの観想生活賛美の哲学へと結晶しました。アリストテレスは「奴隷は生きた財産である」(『政治学』)とも書いています。このような大哲学者も奴隷制により成り立つ社会制度を当然のことと考えていたとは驚きです。

 代助は奴隷制度に賛成しているわけではありません。日本での古代ギリシャ思想の紹介においては奴隷制を無視する傾向があるので、そんなことも考えてもいなかったでしょう。彼はただ親の財産で苦労なく暮らしていける境遇から古代ギリシャの労働蔑視の哲学を違和感なく受け入れることができたのです。

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テーマ : 哲学/倫理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

夏目漱石の描いた高等遊民

 B級遊民という言葉は「高等遊民」をもじってつけました。ここで紙数をいただいて、高等遊民とはいかなるものかについて多少の蘊蓄を語ることにいたします。

高等遊民とは、明治時代の無職の大卒者のことを指します。彼らは金持ちの子弟であり、高等教育機関=大学を卒業したにもかかわらず就職もせずに、裕福な親の世話になってのらくら暮らしていました。夏目漱石の小説『それから』の主人公、代助がその代表的な存在です。

 なぜ高等遊民が生まれてしまったのでしょうか。理由は単純で、就職口が見つからなかったからです。代助と同世代である明治44年卒の大卒者は50%以下の就職率でした。それでしかたなくブラブラしていたわけですが、ブラブラできるだけの後ろ盾もありました。高等遊民の家庭は上流階級が多かったのです。なにしろ明治時代の大学進学率は3%と低く、金持ちでなければ子弟を大学に進ませるなどということは基本的にはありませんでした。

 現在の日本でも大卒後ブラブラしている連中はたくさんいるのはご存知のとおりです。しかし、彼らは高等遊民とは呼ばれずに、即物的に「大卒無職」あるいは「大卒ニート」と呼ばれています。

 この違いは何かと言えば、やはり大卒者の数の圧倒的な違いからきます。なにしろ現在の大学進学率は50%弱。約半数の子どもが大学へ進む時代となっています。かつては学士様と呼ばれた大卒者も今ではフツーの存在になってしまいました。もはや学士の肩書きを「高等」と呼ぶ人はいません。

 当然、大卒者の家庭もフツーの家庭です。中流の家庭の子どもがフツーに大学にいきます。つまり、高学歴化かつ高等教育の大衆化の時代になりました。

 ちなみに大学進学率は、大正時代で4%、昭和に入っても戦前は5%程度にすぎませんでした。大学の大衆化はここ数十年の出来事です。それが今ではその気になれば誰でもなれる実に気楽な存在です。少子化が進んだ現在では大学の方から入学をお願いしてくる始末です。

 話を高等遊民に戻して、小説「それから」を題材にして、その生活ぶりを見てみましょう。

 「それから」の主人公・代助は大学を卒業しても就職せずにブラブラして暮らしています。ブラブラといっても、親の家にいるわけではありません。一軒家に家政婦として雇った婆さんといっしょに暮らしています。書生も一人出入りしています。仕事はしない代わりに、一日読書をしたり、音楽会へいったりして時間をつぶしています。

 ちなみに書生とは、一般の家庭に寄宿する大学生のことです。住居の一角に住まわせてもらう代わりに、家の手伝いなどをします。明治の中期あたりまでは、学生アパートなどあまりなかったようです。

 代助の兄の誠吾は父の関係する会社で重要な地位にあり、姉は外交官に嫁いで外国暮らしをしています。親のすねをかじっているのは代助だけです。月に一度、代助は実家に金を受け取りに行くのですが、たまたま居合わせた父の得と代助は対座することになります。

 代助の父は「お前だって、そう、ぶらぶらしていて心持ちのいいはずはなかろう」と説教を始めます。しかし、お金を得るための労働をすすめるわけでもありません。おそらく代助がそういうことを軽蔑していることを知っているのでしょう。さすがに明治の上流は違います。

 「月々のお前の生計ぐらいどうでもしてやる。だから発奮してなにかするがいい。国民の義務としてするがいい。もう三十だろう」

 さらにこうもいいます。

 「三十になって遊民としてのらくらしているのは、いかにも不体裁だな」

 それに対する代助の考えはこうです。

 「代助は決してのらくらしているとは思わない。ただ職業の為に汚されない内容の多い時間を有する、上等人種と自分を考えているだけである。親爺がこんな事を云うたびに、実は気の毒になる。親爺の幼稚な頭脳には、かく有意義に月日を利用しつつある結果が、自己の思想情操の上に、結晶して吹き出しているのが、全く映らないのである。」

 彼の考えはほとんどの読者には予想外のものでしょう。

それからそれから (岩波文庫)高等遊民天明愛吉

テーマ : 文学・小説
ジャンル : 小説・文学

年収180万円を基準にする

 平成15年の勤労者世帯(いわゆるサラリーマン世帯)の1か月の平均収入は1世帯当たり524,542円。これには世帯主の他に配偶者などの世帯員の収入も含まれています。世帯人員が3.49人なので、一人当たり150,298円となります。

 単純に考えれば世帯人員×15万円が必要になります。自分ひとりだけで生活するなら月15万円の収入でいいのです。ボーナスでの所得は考慮していません。年収にすれば180万円。正規雇用であれば、かなり気楽な数字となります。

 しかし、そう単純にはいきません。4人で暮らしていても風呂やトイレはひとつあればいいし、たいがいの家電もひとつあればいい。もちろん、一人暮らしであれば冷蔵庫や洗濯機のサイズは小さくてもよいですが、価格は4分の1にはなりません。光熱費も同じく4分の1にはなりませんし、そのほかもろもろの経費も4分の1になるわけではありません。つまり、一人暮らしでは4分の1よりも多めにお金が必要なります。つまり一人暮らしは効率がよくありません。そのへんを考慮すると、一人の生活ではさらに上乗せ額が必要になります。

 もっともそれは普通の生活をするつもりならば、という条件での話です。好きなことを優先させて、わがままに暮らす、一人暮らしだからこそ月15万円で生活ができる、と考いたいと思います。

 一人暮らしであれば、どんなに生活費を切り詰めて質素に暮らしても誰も文句はいいません。どんなにいびつであろうと自分のライフスタイルに合わせたお金の配分をしてかまいません。家族からあれが欲しいこれが欲しいとせがまれることもないので、自分が必要だと思わないものはばっさり切り捨ててかまいません。扶養家族がいないのなら、遊興費も教育費も要らないし、生命保険もいりません。思いっきりシンプルな生活を目指して、家賃と食費も少なめにして、趣味だけにお金を使うのも自由です。

 そう考えると、月15万円、年収180万円ですら十分な収入であると私は考えています。足るを知るを心がけて無駄のない生活をするならば、これで足りないということはないでしょう。

 どんなライフスタイルを選ぶにしても、入ってくるお金の範囲内で生活することさえ守っていれば、「必要なだけ働いて、あとは好きなことをして暮らす」ことは現実的な話でありえます。たくさん働いてたくさん稼いでぜいたくな暮らしをするのも、少しだけ働いてあまりお金を使わずに好きなことをして質素に暮らすのも同じことです。問題はどのようなライフスタイルが自分にあっていると考えるかです。

 B級遊民が目指すのはあくまでも好きなことをして暮らすことにあります。好きなことをするためには必要最低限の収入があればよい。そのときの目安が月15万円、年収180万円です。生活する場所によりかかる経費は大きく違ってきますが、ここでは基準値としてとらえておいてください。

イギリス式月収20万円の暮らし方
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お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし
お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし

テーマ : 楽しく生きる
ジャンル : ライフ

必要なだけ働くという思想

 B級遊民は遊んでいるだけではありません。ちゃんと働きます。しかし、それは生活に必要なだけです。生活に必要なだけ働いたら、あとの時間は自分が好きなことのために使います。

 では、どの程度の収入なら生活できるのでしょうか。なにか目安はあるでしょうか。

 原理的には、次の不等式が成り立ってしまえば、生活は可能です。

 収入≧支出

 収入と同等か収入以下に支出を抑えれば生活はできます。入ってくるお金の範囲内で生活できればなんの問題もありません。収入が少ないのならば少ない生活費で暮らせばいいのです。誰でもこんな簡単な原理はわかります。

 問題は、支出をどこまで押さえればいいのかということです。具体的にいくらの支出が必要でしょうか。

 それには、まず生活の単位を考えなければなりません。ここでは基本的に一人あたりの金額で考えていきます。それが基本の生活単位であるからです。それにB級遊民はおおむねシングル(独身者)であるだろうと仮定できるからです。

 短時間労働の仕事を選べば平均よりずっと少ない収入を覚悟することになります。そして、各種調査から見てみて、低収入と家族を持つことは両立しにくいのです。低収入でも好きなことをしたいという生き方は家族を養うという一般的な家父長的ライフスタイル(男性の場合)とは違う生き方です。

 そういうわけでB級遊民はシングルという前提での話となります。

 とはいえB級遊民と独身主義とはイコールではありません。結果的にそうなることが多いだろうという仮定に過ぎません。そこは誤解されては困りますので、念のため。

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プロフィール

Author:Cozy
情報処理系講師、フリーライター。減速生活者にしてB級遊民。

Twitterはcozyoffです。
TwilogはCozy(@cozyoff)です。

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