映画 『クライマーズ・ハイ』

クライマーズ・ハイ [DVD]
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 御巣鷹山の日航機事故を取材する架空の新聞社、北関東新聞を舞台に展開する(ほぼ)男たちのドラマです。

 それにしても、なんという殺伐とした職場。ギスギスした人間関係。いつ殴り合いが始まってもおかしくない雰囲気。これだけ高ストレスの職場にいたら、普通の人は1週間と持たないのでしょう。見ているだけで胃が痛くなりそうです。

 でも、実際の新聞社がこれほどキツイとは思えません。日経新聞社に仕事の打ち合わせで行ったときは、もっと普通の職場でした。もっともそのとき、大きな事件があったわけでもなく、私は生活欄の担当者と会ったので、のんびりしていたのかもしれませんが。

 ともかくこの職場の雰囲気に圧倒されますが、事件が事件だけに取材記者はもうボロボロ。スーツ姿で山を登り降り、連絡手段がなくて、電話を探しまくる。

 キャップの堺雅人のヨレヨレぶりが見物です。山に登ったもう一人は現場の惨状にショックを受けて発狂してしまうし。

 主役は、日航機事故担当全権デスクとなる悠木和雄。演じるのは堤真一。彼が部下や上司との葛藤の中で仕事を進める姿がストーリーのメインとなります。

 悠木のプライベートもからめてストーリーは進みますが、プライベート部分は丁寧に描かれていないし、詳細もよくわかりません。中途半端ですね。

 悠木とやりあう部長、次長クラスの人たちの濃さといったらありません。絶対に付き合いたくないタイプの人たちばかりです。 
 
 そのほか、社長、販売部長ともう最悪の人間たちがこれでもかこれでもかと登場します。

 ほとんどいやがらせですよ、これは。

 しかし、所詮は他人事、どんなに最悪の職場でも、私には関係なし。映画として面白いです。

 残念なのは、なんで「クライマーズハイ」なのか、ということ。なんで山登りが重要そうな背景となっていて、このタイトルをつけたのか。よくわかりません。仕事もきついとハイになるということでしょうか。

 過労で死んだ安西(高嶋政宏)の存在も原作ではきっともっと意味があったのだろうと思います…。

 ちなみに、NHKのドラマでも「クライマーズ・ハイ」をやっていました。こちらは佐藤浩市が主演。ハゲタカの大森南朋も出ていました。amazonではNHKドラマ版の方が評価が高いです。

 ちょっとネタばれになるかもしれませんが、この映画はアンチクライマックスです。一番盛り上がって感動するはずの場面で、ずっこけます。歓喜のラストを期待してはいけません。

 これがハリウッド映画なら、間違いなく「スクープ取ったどー、やったぜ悠木ちゃん」となります。原作を捻じ曲げてもやります。それをやらない日本映画はやっぱり世界のマイナー。よく言えば、原作を大切にする良心的な作り。でも映画的にはこれでよかったのでしょうか、疑問です。

↓テレビ版もいいです。
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横山秀夫

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『ウェブはバカと暇人のもの−現場からのネット敗北宣言−』 つづき

 著者はニュースサイト編集者ですからアクセス数には敏感です。どんな記事や企画が受けるかについては経験豊富なようです。

ネットでウケるネタ

(1)話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの
(2)身近であるもの(含む、B級感があるもの)
(3)非常に意見が鋭いもの
(4)テレビで一度紹介されているもの、テレビで人気があるもの、ヤフートピックスが選ぶもの
(5)モラルを問うもの
(6)芸能人関係のもの
(7)エロ
(8)美人
(9)時事性があるもの


 「突っ込みどころがあるもの」というが面白いですね。コメントやトラックバック、ブログや2chなどで、突っ込むのでしょうが、いかにもインターネット的な特性が表れています。

 「モラルを問うもの」も意外なような、納得のような。人はどうも善し悪しには一家言あるようです。納得できなければ、何か言いたくなるでしょうし、論理と違って倫理は根拠を示さなくてもいいですから。

 最後はネットでユーザーを囲い込んだり、広告を打ちたいと思っている企業に対して。


企業がネットでうまくやるための5箇条

1.ネットとユーザーに対する性善説・幻想・過度な期待を捨てるべき
2.ネガティブな書き込みをスルーする耐性が必要
3.ネットではクリックされてナンボである。かたちだけ立派でも意味がない。そのために、企業にはB級なネタを発信する開き直りというか割り切りが必要
4.ネットでブランド構築はやりづらいことを理解する
5.ネットでブレイクできる商品はあくまでもモノが良いものである。小手先のネットプロモーションで何とかしようとするのではなく、本来の企業活動を頑張るべき


 このアドバイスにより、逆に企業がネットに対してもっているイメージが過大なものであることがわかります。

 強制的に送られるテレビ広告とは違って、クリックによって引き込む必要のあるネットとの違いも、うまく捉えています。

 本書はGoogleについて触れていないのですが、検索連動型広告がGoogleに独占されている状況では、「キーワード」とはまた違ったアプローチでのマーケティングが必要なようです。


ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
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『ウェブはバカと暇人のもの−現場からのネット敗北宣言−』 中川淳一郎

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
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 ニュースサイト編集者である中川氏がネット利用者の多くはバカと暇人であると断定し、それなりの付き合い方を論じています。

 ネットで価値あるものが生み出されていくWeb2.0が成立するのは、利口なユーザーが集まる「頭の良い人」の世界のこと。ほとんどがバカと暇人であるネットでは、そんな生産的で意義あるものは作れないと著者はいいます。彼らにとってはネットは暇つぶしの道具なのだから、そんなに期待せずに、ネット利用者の生態を理解して、うまく利用していこう、と。

 どういう人がどういう利用の仕方をするかは、システムや運営の仕方によるのではないかと思いますが、著者の言うこともそれなりに当たっていそうです。本書には過去のネット上の事件や不祥事やらがいろいろと紹介されていて、よくもまあこれだけ面白くもあり、バカらしくもある出来事がネットでは次から次へと発生するものだと感心します。

 私としては具体的に何割の人がそんなことをしているのか、ネットでバカをする人と頭の良い人は重なるのではないか、ということが気になりますが、ここではそういう疑問はさておいて、著者の体験から得られた提言やアドバイスを聞いてみましょう。


 ネットで叩かれやすい10項目

(1)上からものを言う、主張が見える
(2)頑張っている人をおちょくる、特定個人をバカにする
(3)既存マスコミが過熱報道していることに便乗する
(4)書き手の「顔」が見える
(5)反日的な発言をする
(6)誰かの手間をかけることをやる
(7)社会的コンセンサスなしに叩く
(8)強い調子の言葉を使う
(9)誰かが好きなものを批判・主張する
(10) 部外者が勝手に何かを言う



 ことの良し悪しは別です。批判されてしかるべきかは問題ではありません。こういうものは叩かれやすいと言う著者の経験則です。

 なるほどと思わせるものが多いです。でも、(4)はどうでしょうか。検索されて過去の発言と比較されると困るとか書いてますが、それはちょっと別のような。

 ここにあげられた特徴を総合するとなかなか面白い人物像が浮かび上がります。マスコミ嫌いなのに付和雷同、右翼的なのに反権威的。はっきりした矛盾ではありませんが、相反的な性格が描かれています。(反日を嫌うから右翼的というのは正しくないですね。うまい表現が見つからなかったので、とりあえずこのままにしておきます)

 もちろんすべての書き込みが同一人物のものではありませんから、ひとつの人物像と考えるのは無理があります。漠然と、ネット大衆なるものの傾向と考えておきましょうか。


(つづく)

僕が2ちゃんねるを捨てた理由 (扶桑社新書 54) 600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス (角川SSC新書) インターネットが死ぬ日 (ハヤカワ新書juice) グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書) 新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に
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『肉声 太宰治』 山口智司

肉声太宰治
山口 智司
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 太宰治生誕100年ということで、出版ブーム、映画ブームとなっています。

 私も若い頃は太宰はけっこう読みました。主要作品で読んでいないのは「右大臣実朝」くらいです。おそらく全作品の8割は読んでいると思います。

 さすがに今では距離を置いて見てしまいますが、そういう覚めた目から見てもやはり面白い小説家であり、人間です。

 太宰の小説の面白さはどこにあるのか。

 太宰治は私小説を書いた人のように思われがちですが、じつは違っていて、実際に体験したことを題材にしていても、かなり脚色しています。このあたりの事情は二度目の妻である津島(石原)美知子のエッセイ『回想の太宰治』に詳しく語られています。

 だから嘘なのかと言えば、そうではなく、真実を明確にし、面白くするために脚色であり、描かれたものは事実ではないけれど小説的真実というものです。真実と面白さを共存させるための虚構。そこに太宰の面白さの要因の一つがあります。

 太宰治は小説中の主人公と作家がかなり近いために、その人物像もどこまでが事実でどこからが虚構なのか不明です。有名なエピソードの数々はまさに太宰の作品のように鮮やかに人物像を描いています。

 本書は、そうした太宰のエピソード。とりわけ太宰治自身が実生活で発した言葉を拾い集めています。ここに集められた手紙や口頭での発言は、太宰の小説の主人公のように太宰的です。芝居がかっていたり、オーバーであったりで、普通の生活人の発言ではありません。まさに太宰治そのものです。 

 読み進むうちに思うことは、ここに太宰治の真実があるというよりも、意識的に太宰治という人物が演じられているのではないかという疑惑です。

 それが本書の面白さであり、奇妙な深みを感じさせる所以でもあります。
 
 つい先日、「太宰治物語」というテレビドラマを見ました。太宰治役は、豊川悦司。美知子婦人を寺島しのぶ、太田静子を菅野美穂、山崎富栄を伊藤歩が演じました。

 太宰とはちょっとイメージの違う豊川ですが、この作品のセリフは実話からとったものが多く、なるべく太宰を忠実に再現しようとする意思を感じました。人物像を知りたい人にはお勧めです。ただもう少し病気による死への傾斜を丁寧に描いてもよかったのではないか、と思いますが。

 まだ読んでいない「右大臣実朝」を読みたくなってきました。


>回想の太宰治 (講談社文芸文庫 つH 1) 文豪ナビ 太宰治 (新潮文庫) 文芸別冊太宰治 (KAWADE夢ムック 文藝別冊) 走れメロス (新潮文庫) 太宰治検定公式テキスト (-旅をしようよ!「津軽」-)
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『グーグル革命の衝撃 検索があなたの人生を変える』 NHK取材班

グーグル革命の衝撃 (新潮文庫)
4101283710


 NHKスペシャル「“グーグル革命”の衝撃 あなたの人生を“検索”が変える」の書籍版です。

 テレビ放送に比べてこの書籍版は情報量が多く、グーグル幹部へのインタビューも掲載されていて、盛沢山です。グーグルの誕生物語からはじまり、グーグルの現在、未来まで網羅しています。

 グーグルは二人の学生が出会い、独自の検索システムを生み出し、ページのランキング手法を生み出し、広告と連動させることで商業化に成功しました。

 コンピュータが自動で収集したウェブ情報、その膨大な量のデータから瞬時に検索結果を導き出すのは、グーグルの数十万ともいわれるコンピュータが連携したネットワークの仕事です。流行の言葉で言えば、クラウド・コンピューティング。

 広告事業で商業化に成功したグーグルは、広告の新しい形態を次々と生み出し、あらゆる媒体の広告事業に乗り出しています。

 しかし、その検索が企業の生死を握るほどに重大な意味を持っているにもかかわらず、アルゴリズムは不明です。検索結果にどれだけの客観性のがあるのか、グーグルの恣意性がどれだけ繁栄しているのか、まったくわかりません。

 一企業の検索結果が政治的、思想的な偏向を生み出しはしないのか、疑問は残ります。具体的には、中国での検索結果のフィルタリング問題があります。

 グーグルの具体的な影響力ももちろんですが、その壮大な目標に圧倒されます。

 グーグルは、あらゆる情報(文字、映像、動画)をあらゆる言語で検索できることを目標にしています。あらゆる情報には、個人の情報、検索履歴、なども含まれ、そのデータを元にエージェント的なサービスを行い、広告と連動させようとしています。

 個人の情報、それはその人自身の記録や記憶までもがグーグルに蓄積され、検索可能になるのです。しかも本人が特定の情報を欲しなくても、過去のデータを参照することでエージェントが働き、その人に有用な情報を提供しようとします。

 もちろんこれはamazonが一部実現していますし、NTTドコモのサービスにもその一端が見られます。ただ、グーグルの場合、情報の蓄積が膨大であるうえ、本人の承諾があれば、あらゆる個人情報が蓄積しようと考えています。

 その具体的な結果がどうなるのか、興味深いことであると同時に、そら恐ろしくもなります。

 私自身もグーグル検索は頻繁に利用しています。グーグルのない生活は考えられないくらいです。

 しかし、危惧を覚えると同時に楽観もしています。いくらグーグルのシェアが大きいといっても、他の検索サービスだってあります。yahoo!でもMSNのbingでも十分な検索が可能です。グーグルだけが検索技術を独占しているわけではありません。グーグルが危険なら他のサービスを使えばいいだけのことではないでしょうか。

 Windowsマシンを買えば、最初はIEを使い、検索はbingがデフォルトです。検索革命はまさに衝撃と言ってもいいでしょうが、グーグルがすべてを支配することにはならないような気がします。


グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書) ザ・グーグルウェイ グーグルを成功へ導いた型破りな戦略 ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘う飲食店オーナーの奮闘記 (新潮文庫) 僕が2ちゃんねるを捨てた理由 (扶桑社新書 54) グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)
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プロフィール

Author:Cozy
大学非常勤講師(情報処理)、フリーライター。減速生活者にしてB級遊民。Cozy's 東京スナップの管理人。
メールでの連絡はこちらまで。
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